「何もしない休暇」が旅行の新トレンドへ、ホスピタリティ企業も対応を加速
ヒルトンは利用客の「睡眠の質」向上ニーズに着目
旅行者の「休息」への意識の高まりにいち早く気づいていたのはヒルトンだ。Do-Nothing Vacationという言葉は使っていないものの、2023年10月に発表した「2024年版グローバル・トレンド・レポート」において、世代を問わず旅行の主目的が「休息と充電」になっていると明らかにしている。 ヒルトンのレポートでは回答者をZ世代(16-26歳)、ミレニアル世代(27-42歳)、X世代(43-56歳)、ベビーブーマー世代(57-72歳)の4世代に分けているが、いずれの世代でも旅行の主目的を「休息と充電」とする割合が最も多かった。 そして「休息と充電」に不可欠な要素としてヒルトンが着目したのが「質の高い睡眠」だ。調査結果では27%が「良いマットレスを採用しているホテルブランドを選ぶ」と回答している他、18%がお気に入りの枕を持参する、10%がホワイトノイズ機器を持ち込むと回答しており、旅行者の睡眠への意識の高さがうかがえる。 ヒルトンは利用客へ質の高い睡眠を提供すべく、系列ホテルで様々な取り組みを開始している。例えばウェルネスに特化した新ブランドのTempo by Hiltonでは、入眠用のアメニティを取りそろえて眠りをサポートする。他にも最高級レベルのマットレスを導入したり、好みの枕を選べるピローメニューを提供したり、スパにも睡眠を組み合わせたスリーブセラピーを導入するなどの取り組みを行っているホテルもある。
オールインクルーシブスタイルへの滞在ニーズの高まり
「何もしない休暇」を仕組みで後押しする方法として注目が集まっているのが、オールインクルーシブスタイルの滞在だ。 WyndhamやRamadaなどを傘下に持つホテルチェーンWyndham Hotels & Resortsの調査によると、77%の旅行者が、オールインクルーシブスタイルのバケーションを「最もストレスの少ない旅行方法」だと回答している。 実際にハイアット系列のオールインクルーシブホテルでは、2024年第一四半期の予約数が前年より11%増えているという。 オールインクルーシブスタイルのホテルでは、一歩も外に出なくても滞在が完結できるように、ホテル内にレストランやバー、プールなどの設備が充実している。そして滞在中の食事代、ドリンク代、アメニティ使用料などは全て宿泊費に含まれていて、何をどれだけ飲み食いしても支払い金額は変わらない。 元々カリブ海のリゾート地ではこのオールインクルーシブスタイルが多く、筆者も以前メキシコ・カンクンのオールインクルーシブホテルに宿泊したことがある。レストランのメニューには金額が書かれておらず、バーでどれだけ飲んでも料金やチップを要求されることはない。1週間ほど滞在すると、金銭の存在を少し忘れてしまうような、なかなか非日常の体験だった。