FXはギャンブルと同じ...お金持ちになるための「シンプルな方程式」とは?
FXや宝くじは魅力的だが、「ゼロサムゲーム」のため誰かが損をする仕組み。うまくいけば富裕層になれるかもしれないが、資産を失うことにもなりえる。堅実に資産を増やすには? 『THE21』2024年7月号では、長年「お金と人間」というテーマに向き合ってきた作家の橘玲氏に、今必要なお金に対する考え方を聞いた。(取材・構成:石澤寧) 【元長者番付1位】清原達郎氏が推奨する新NISA運用法 ※本稿は、『THE21』2024年7月号特集「40代・50代は新NISAをどう使えばいいのか」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。 ※本稿は2024年6月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
一攫千金を狙う人が知っておくべきこと
株式インデックスファンドへの積立投資は、経済学的に最も正しい投資法ですが、欠点があるとすれば、そのパフォーマンスが市場平均と同じで、夢がないことでしょうか。確かに、半年で株価が倍になるようなことはなく、効果を実感するまでには10年単位の時間がかかります。より短期で儲かりそうな投資に目がいく気持ちは、わからないでもありません。 ただ、ここで理解してほしいのは、ゲームには「ゼロサムとプラスサム」があることです。前者は「差し引きするとゼロ」で、誰かが得をすればその分誰かが損をします。それに対してプラスサムのゲームでは、取引をすればするほど自分も相手も儲かります。 山で食べきれないほどたくさん採れたキノコを、海で食べきれないほどたくさん採れた魚と交換する取引を考えてみましょう。そのままでは腐らせるしかなかった商品が、交易によって価値を持つようになり、それによって両者の富は大きく増えます。 グローバル市場がとてつもない富を生み出すのは、国境を越えたプラスサムのゲーム(市場取引)を大規模に行なっているからです。 市場経済から富裕層が生まれるのは、金持ちが貧乏人から略奪しているからではありません。 株式市場への投資は市場経済の未来に賭けることなので、全体としてはプラスサムの取引になります。 ただし、個々の企業は成長することもあれば、破綻することもあるので、株を買えばなんでも儲かるわけではありません。また市場が成長するには時間がかかるので、短期的な売買は、投資対象が株式インデックスであっても、自分が得をすれば相手が損をするゼロサムゲームになります。 自分のお金を増やそうというときに、時間とともに参加者全員の富が増えていくプラスサムのゲームと、奪い・奪われる弱肉強食のゼロサムゲームの、どちらを選ぶべきかは明らかではないでしょうか。 FX(外国為替証拠金取引)は円とドルのように異なる通貨の交換比率を予測し、それに高いレバレッジをかける典型的なゼロサムゲームです。FXに人気があるのは、投資というよりもギャンブルに近いからでしょう。 とはいえ、私はギャンブルそのものを否定しているわけではありません。FXの手数料率は、FX会社同士の競争によって、いまや0.1%程度まで下がっています。それに対して宝くじの期待値(還元率)は50%で、経済学者から「愚か者に課せられた税金」と呼ばれています。競馬などの公営ギャンブルの期待値も75%で、手数料率は25%です。 それに比べてFXは、カジノのどんなゲームよりも期待値が高く、そのうえ最大25倍までのレバレッジがかけられるのですから、そのコストパフォーマンスは圧倒的です。 ただし、コスパがいいからといって必ず儲かるわけではありません。株式市場も為替市場も、素人とプロが同じ条件でプレイしているのですから、簡単にひと財産稼げるような甘い話はありません。