11.5米大統領選後、日本株を覆う霧は晴れるのか
さすがに11月と12月のFOMCにおける0.25%の利下げ予想は維持されているものの、2025年入り後の予想利下げ幅は縮小し、2025年12月のFOMCにおける予想政策金利は3.5%程度まで切り上がっている。 FOMC開催直後(今年9月18日時点)における2025年12月の予想政策金利は2.8%程度だったので、この間に市場参加者が想定する「下方ターミナルレート(利下げの最終到達点)」が大きく切り上がったことがわかる。こうした環境下で日米の長期金利差が拡大し、ドル高・円安が進むこと自体に大きな違和感はない。
ではなぜアメリカの株価に比べて日本株が冴えない動きになっているのかといえば、それは11月5日のアメリカ大統領選挙をめぐる不透明感が大きいだろう。 共和党のドナルド・トランプ氏の優勢が伝わる中、とくにその影響が懸念されているのは自動車・同部品だ。TOPIX(東証株価指数)輸送用機器指数は2024年初を100とすると、3月22日に円安、資本効率改善、世界的なEV販売の失速(≒ガソリン車の巻き返し)などを好感して138.3まで上昇したものの、それ以降は下降トレンドをたどり、8月5日の暴落時には86.6まで水準を切り下げた。
その後も円安が進行したにもかかわらず、10月25日時点の終値では100近傍で推移した。さすがに日本株の全面高を受けて10月28日には上昇したものの、同業種は、年初来の上昇を帳消しにした状態にあり、これが株式市場全体の重荷となっている。 ■トランプ氏は関税率の大幅引き上げに本気なのか 言わずもがなトランプ氏は政治的に関税を好んでおり、中国製品の税率を60%に引き上げると主張している。その他の国の製品に対しても10%の関税を課すとして、日本からアメリカへの自動車輸出に課せられる税率は現在の2.5%から上昇する可能性がある。
またメキシコ生産分については関税率200%にするとも言及しており、もし実現すれば日系メーカーを含む自動車大手に打撃を与える公算が大きい。ちなみにトランプ氏はこれまでメキシコからの輸入車については100%の関税を課すとしてきたが、10月13日のインタビューでは「200でも500でも構わない。彼らが1台も売れないような数字を出すつもりだ」と語気を強めた。 このように、トランプ氏が言及する数値に頑健な根拠がないことを踏まえれば、10%や60%という数値も政治的パフォーマンスが過熱する中で浮かんできたものなのかもしれず、政策の実行段階で見直される可能性は十分にあると思われる。