元3階級世界王者直伝の秘策あり?!那須川天心がメイウェザーにパンチを当てる公算はあるのか
ボクシング仕様へのモデルチェンジは順調だ。 米国ではラスベガスにあるリナレスのジムで約2週間特訓を積んだ。あのワシル・ロマチェンコと激闘を演じたリナレスが、来年1月18日に米国で復帰2戦目のリングに立つこともあって1日に4ラウンドから5ラウンドのスパーリングをリナレスと行った。スーパーライト級に階級を上げて戦っているリナレスは、今回、ウェルター級で戦うメイウェザーの体重に近い。未知の領域だった中量級の世界のトップボクサーと拳を交えたことは大きな収穫になった。 「凄く濃い2週間で、いろんなものを吸収して帰ってきた。ほんとに変わった。こんなに変わるんだっていうくらいに。ステップ、パンチの硬さ、スピード。一番はステップ。リナレスさんの動きには、世界トップはこうなんだ、とビックリしたが、これなら(メイウェザーにも)当たるんじゃないか、と自信にはなった」 日本語が堪能なリナレスからは、メイウェザーが使うL字ガード対策のアドバイスをもらった。 「メイウェザーはL字ガードで防御がうまいが、それを逆に利用して、こういうパンチが当たるよ」 実は、L字ガード潰しに有効とされるのが、サイドからの崩しだ。メイウェザーの右のカウンター、フリッカージャブ、右アッパーの標的にならないようにサイドから動く。しかも右構えのL字ガードは、サウスポーに弱いとされている。メイウェザーも2012年5月のミゲール・コット戦では、しばしばサウスポーにスイッチされサイドから崩され苦戦している。リナレスから教えられたステップワークが役に立つかもしれない。多彩なリードブローも有効だが、空いた場所を探して打つのではなく、あえて止まっている左肩を打つ戦法もある。元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志は、L字ガードを駆使した暫定王者、ブライアン・バスケスとの6度目の防衛戦では、それを使って揺さぶりをかけTKOに葬っている。「L字ガードのディフェンスを崩す練習を最大限にやっている」と天心も言う。 だが、3ラウンドのエキシビションマッチである。 KOありだが、勝敗はつかない。その状況で過去最高のディフェンス技術を持つ元5階級王者に、ボクシングマッチ未経験のキックボクサーが挑み、試合の契約体重はウェルター級に相当する147ポンド(66.68キロ)。フェザー級が主戦場の天心とは4階級の体重差……。どう見てもハンデだらけだ。 「KO、倒すことは考えているが、まず当てること。当たれば階級に関係なく倒せるパンチは持っている。(メイウェザーの)パンチは見えると思うし当てるポイントを探していく」。天心はそう言うが、9分間、遊ばれて終わる公算は高い。 帝拳ジムのチーフトレーナー時代に西岡利晃、三浦隆司らの世界王者を育て小学校の頃、帝拳に入門していた天心に手ほどきをしたこともある葛西氏の見立ては至極真っ当だった。