「金星」の火山が1990年代に噴火した新たな証拠を発見! 確認されれば太陽系3例目の天体に
■金星が現役の活火山を持つ3例目の天体となる公算は大きい
今回の研究は、2023年の研究とあわせて、金星には現役で活動している活火山が存在する可能性が極めて高いことを示しています。金星は、地球とイオに次いで3例目の熱い活火山を持つ天体となりそうです。もしも噴火の瞬間を捉えることができれば、さらに多くのことが分かるはずです。 現在NASAでは、金星のより正確な地図の作成をメインミッションとする金星探査機「VERITAS」の打ち上げを目指しています。VERITASで得られるマゼランよりもずっと高精細な地形データは、今回の研究で推定された活火山の痕跡が正しいかどうかを評価するだけでなく、マゼランのデータからは発見できなかった新たな活火山の痕跡を捉えることにもつながるでしょう。
■注釈
※1…地球の活火山は「過去1万年以内に噴火したことがある火山」と定義されています。地球以外の天体に対する定義はありませんが、概ね同程度のタイムスケールで考えられているケースが大半です。 ※2…水やそれ以下の温度の液体を噴出する「氷火山(Cryovolcano)」を含める場合、噴火の瞬間が観測された天体には水を噴出する木星の衛星の「エウロパ」と土星の衛星の「エンケラドゥス」、液体窒素を噴出する海王星の衛星の「トリトン」が追加されます。ただし、エウロパとエンケラドゥスは地下の海(内部海)からの噴出物であるため、氷火山というよりは間欠泉として表現されることが多いです。また、火山のような地形があったり、薄い大気の維持に氷火山が関与していると考えられている氷天体は、これ以外にも沢山あります。 ※3…比較として、地球には100万以上の火山があると見積もられています。しかしその大半が海底火山であり、かつ活動を停止しています。活火山は地上や比較的浅い海底に約1500、海嶺や深海底に約5000あると推定されています。 ※4…衛星が存在しないことによる潮汐力の欠如も理由の1つとして挙げられます。ただし、潮汐力は非常に巨大な天体が複数あり、公転軌道の間隔が狭い場合に最大化されるため、金星に巨大な衛星が存在したとしても、それほど火山活動は激しくならなかったかもしれません。参考として、地球が月から受ける潮汐エネルギーは地熱エネルギーの約6%であり、地球の火山活動の主なエネルギー源は放射性同位体の崩壊熱と地球形成時に変換された重力エネルギーであることが挙げられます。 ※5…比較として、西之島の2013年から2015年にかけての噴火では、総量0.16立方km(1億6000万立方m)のマグマが噴出したと見積もられています。 Source Davide Sulcanese, Giuseppe Mitri & Marco Mastrogiuseppe. “Evidence of ongoing volcanic activity on Venus revealed by Magellan radar”. (Nature Astronomy) Ian J. O’Neill, et al. “Ongoing Venus Volcanic Activity Discovered With NASA’s Magellan Data”. (NASA / Jet Propulsion Laboratory)
彩恵りり / sorae編集部