ゲームの本質は「緊張と緩和」 バイオハザードを生み出した三上真司の制作魂
1発撃ってもまだ迫ってくる恐怖感
──三上さんは海外メディアからの取材も多く、評価も高いです。 ありがたいことですが、アメリカやヨーロッパとか、海外を意識してこれまで制作してきたわけじゃないんです。「世界を意識したゲームづくりって何ですか」と聞かれたことあるんですが、そもそも意識してないからわからない。 ──ただ、「サバイバルホラーの生みの親」という表現をしばしばされてきました。 そうなんですけど、ほかにもさまざまつくっていますよ。サバイバルホラーだけの人と思われるのはちょっと抵抗あります。若い頃はディズニーのゲームだって3本つくってますから。若い女性に対しては、「バイオ」をつくった人よりも、「アラジン」のゲームつくった人というほうがウケがいいです(笑)。普通につくったホラーが、ユーザーにおもしろいと評価してもらっているのだと思います。
──「バイオハザード」はウイルスに感染したゾンビなどが迫ってくるなか、それらを倒して進んでいくゲームです。何が一番ユーザーに響いたと思われますか。 最初の「バイオ」というゲームは(キャラクターを素早く操作する)、アクションゲームに見えるんですが、じつはシミュレーションゲームのような考え方でつくっているんです。ゾンビを銃でパンパン撃って倒していくだけだと、ただのアクションゲームです。でも、バイオは1発撃ってもゾンビは死なない。迫ってくるのでまた撃つ。でも再び迫ってくる。「えっ、まだ死なない」と驚いてまた撃つ。「どうしよう、やばいやばい……」とユーザーが焦りながら、恐怖感が芽生えるわけです。システム的には、アクションよりもシミュレーションゲームに近いんです。だから、設定はさまざま考えました。1発撃ったら何センチ迫る、ゾンビの体力はある程度ランダムにする、弾や持ち物に限りがある……。そうした条件を細かくつくっている。厳しい条件があるから、ユーザーは恐怖や緊張を覚えるんです。 ──そんななか、やっとゾンビを倒すとほっとします。 そう、その緩和というか、ほっとするところに気持ちよさがあるんです。ゲームの本質は緊張と緩和というのが僕の持論です。それを「バイオ」はうまく表現できたんだと思います。