「浮気したのはどっち?」梅毒の感染発覚→カップル間で犯人探し 慰謝料や離婚理由になるのか
●梅毒感染だけで離婚が認められる可能性は小さいが…
──梅毒を含む感染症をうつされたことは離婚事由になるのでしょうか。 裁判で離婚が認められるには、民法770条に定められた以下の離婚理由があると認められることが必要です。 (1)不貞行為があった場合 (2)悪意で遺棄されたこと (3)3年間以上生死不明であること (4)強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があること 梅毒等の感染症をうつされたということは、(1)の不貞行為が疑われる状況です。しかし、感染の事実が判明したとしても、実際に、いつどの経路で感染したかを明らかにすることは至難の業です。 したがって、梅毒にうつされたことだけで、離婚が認められる可能性は小さいでしょう。 もっとも、うつした側が、梅毒になった理由として、不貞行為をしたことを認めているような場合は、(1)の不貞行為があったとして離婚が認められる可能性があります。 また、自分が梅毒であることを認識しつつ、それを相手に伝えずに積極的に性行為を行って感染させたような場合は、状況次第で(5)に該当するとして離婚が認められる可能性があると考えられます。
●「感染させられたから慰謝料!」は容易でない
──梅毒をうつされたことに対して、治療費や将来の妊娠に対する不安を覚えたことに対する慰謝料請求は認められるのでしょうか。 梅毒に感染させられた、というだけで治療費や慰謝料を請求するのは難しいです。 なぜなら、治療費の請求や慰謝料などが認められるには、相手の行為が民法709条の不法行為に該当することが必要だからです。 梅毒は、自分でも感染していることが分からない場合が多いため、感染させる意思がないのが一般的です。 その場合は、人に感染させることを避けることができないため、感染させてしまったとしても、故意や過失が認められず、不法行為には該当しないと考えられます。 ただ、自分が感染していることを認識していたのに、そのことを相手に伝えずに性行為などを行って感染させた場合は、故意や過失が認められますので、治療費や慰謝料の請求が認められる可能性があります。 ──先に感染したのがどちらかわからないケースもありそうですが、そのような場合に同じような請求を受けたときはどう対応すれば良いでしょうか。 先にどちらが感染したのかさえ分からないようなケースでは、双方とも治療費が必要ですし、どちらが悪いとも言えないと思います。したがって、相手から一方的に治療費や慰謝料を請求されても、支払う必要はありません。
【取材協力弁護士】 近藤 美香(こんどう・みか)弁護士 弁護士登録直後から大手弁護士法人にて500件以上の離婚・不倫慰謝料問題の解決に関与。夫婦カウンセラー資格保有。これまでのキャリアを生かし、独立後も引き続きこれらの問題に注力しています。 事務所名:エトワール法律事務所 事務所URL:https://etoile-lawoffice.jp/