新種のヤモリを発見、ゴッホの名画にちなんで命名、「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」
黄色い渦巻きとコバルトブルーの名画「星月夜」、インド秘境の西ガーツ山脈
フィンセント・ファン・ゴッホが「星月夜」を描いてから133年。そこから遠く離れたインドの西ガーツ山脈の岩陰で、イシャン・アグラワル氏が小さくてカラフルな新種のヤモリを見つけたとき、心に浮かんだのは、その名画だった。 【関連写真】「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」の全身の写真 このヤモリは、一般名として「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」という意味の「van Gogh starry dwarf gecko」、学名にはゴッホに由来する「Cnemaspis vangoghi」という名前が付けられた。学術誌「ZooKeys」の最新の研究で示された、Cnemaspis属の2つの新種の1つだ。 アグラワル氏は、西ガーツ山脈について、「その信じられないほど多様な動物相については、まだほとんどわかっていません」と言う。そこはまさに生物多様性のホットスポットで、定期的に新種が見つかっている。
色違いのヤモリ
2022年、生物学者であるアグラワル氏は、新種の無脊椎動物を探すため、インドのタミル・ナードゥ州、西ガーツ山脈の東部にいた。この険しい山脈は、インド西岸に沿ってのびており、さまざまな種類の生物が生息している。ムンバイのサッカレー野生生物財団に所属するアグラワル氏は、数カ月をかけて2万キロ近くを移動しながら調査を続けていたが、頭からつま先までダニだらけになっただけで、たいした成果はなかった。 これからどうするか迷いはじめたとき、青と黄色のヤモリを見かけた。そして、ゴッホの名画で見た、あの印象的なマスタードイエローの渦巻きと深いコバルト色を思い起こした。 このヤモリの最初の標本は、スリビリプットハー・メガマライ・トラ保護区から見つかった。体長2.5センチほどのオスの標本で、同じく最近見つかったCnemaspis galaxiaにも似ていた。異なる種だとわかったのは、アグラワル氏がこのヤモリを持ち帰り、DNA解析を行ったからだ。 「ここで多くの種を発見している理由のひとつは、2つの群れが実際に2つの種だと示せる分子データがあるからです。これらの種は、とてつもなく多様なのです」。アグラワル氏はそう話す。 近縁種と同じく、C. vangoghiのオスの色は、メスよりも明るい。アグラワル氏は、メスの標本も採取したが、メスの青と黄色はもう少し落ち着いた感じだった。 米ミシシッピ女子大学の進化生物学者、トラビス・ヘイギー氏によると、この特徴的な色は捕食動物に見つかりやすい反面、メスは鮮やかな色のオスを好む。 「つねにこのふたつがせめぎ合っているわけです」とヘイギー氏は話す。