新型ディフェンダー90 D300は鬼に金棒だ!!! 3ドア+6気筒ディーゼルの組み合わせが素晴らしい理由に迫る
期待どおりに力が湧いてクルマが加速する
見下ろし感覚たっぷりのドライバーズシートに腰を下ろしてエンジンスタートボタンを押すと、D300は瞬時に目覚めて機嫌の良さそうなハミングを奏でる。エンジンに詳しい人なら「これはディーゼル」と、瞬時に言い当てられるだろうが、詳しいからこそ、その静けさと音質のやわらかさに驚くだろう。 静かなだけでなく、ディーゼルに特有のとげとげしさがない。ガラガラではなく、乾いたカラカラである。半分、サラサラが混じったような、軽快な音質だ。その印象は走り出しても変わらない。 D300は2340kgの車体を軽々と動かす。アクセルペダルの踏み込み量とそれにともなうエンジン音の上昇(繰り返すが、ディーゼルエンジンにしては軽やかな音質だ)がリンクするので、エンジンが仕事をしてクルマを動かしていることが実感できる。しかし、エンジンとは思えないほどに応答が良く(モーターの応答性に近い)、力の出方もリニアで、しかも力強い。期待どおりに力が湧いてクルマが加速するので、気持ちいいことこの上ない。 低速域ではBSGが機能して加速をアシストし、エンジンの回転上昇にともなって1基目のVGTが機能しだし、さらに回転が上昇すると2基目のVGTも作動して大きな力を発生させる。BSGと2基のVGTの連携が見事で、ドライバーの操作に対して逡巡したり、切れ目があったり、頭打ち感があったりはしない。どんな状況でも、期待に応えてクルマを頼もしく加速させてくれる。見事というほかない。 110のディーゼル仕様に乗ったときの経験と照らし合わせてみると、90はコンパクトなぶん、俊敏に動く印象だ。2585mmのホイールベースは110より435mmも短く、最小回転半径は110の6.1mに対し、5.3mでしかない。キビキビ動く取りまわしのいい車体に応答性が良く、力強いディーゼルエンジンの組み合わせ。「これはもう、鬼に金棒でしかない」という感想を脳裏に浮かべながら、富士山を望む山坂道を駆けまわった。
文・世良耕太 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)