選挙続く欧州が恐れる「トランプ旋風」 EUとNATOの行方
オランダ、仏、独で相次いで選挙
トランプ政権がスタートしたことに一喜一憂する人は、アメリカ国外にも少なくない。イギリスとドイツの新聞社が行った16日に掲載したインタビューの中で、トランプ大統領はEUとNATOに対する懐疑的な見解を示したが、存在意義をめぐって議論が続くEU加盟国では「欧州版トランプ現象」によって離脱派が大躍進する可能性も浮上しており、今年オランダ、フランス、ドイツで行われる選挙の結果次第では、EUの将来が大きく変わってもおかしくはない。 これら3国の中で先陣を切る形で総選挙が行われるのがオランダである。オランダ総選挙では、反EUとイスラム移民の排斥を訴える極右政党「自由党」がどれだけ躍進するかに注目が集まっており、同党のヘルト・ウィルダース党首は、「私が首相になれば、すぐにEU離脱を問う国民投票を実施する」と公言している。近年躍進が著しい自由党だが、現在の連立与党を引きずり下ろすだけの力はまだないとの見方が一般的だ。しかし、現在の勢いが続けば連立与党は大打撃を受けるとの予測も。
4月にはフランスで大統領選挙が行われる。フランスの大統領選挙には独特のシステムがあり、候補者が1回目の投票で投票数の過半数を獲得できなかった場合には、2週間後に上位2名の候補者によって2回目の投票が行われる。1965年の大統領選挙以降、全ての2回目の投票で決着がついており、フランス国内の世論調査をベースにして考えた場合、中道右派とされるフィヨン元首相と、極右政党として知られる「国民戦線」のマリー・ル・ペン党首との一騎打ちになるとの見方が強い。 最近のル・ペン氏はロシアからの借入金の実態が報じられ、クリミア半島をめぐる発言に激怒したウクライナ政府がル・ペン氏を入国管理のブラックリストに加えたことも話題になっている。選挙そのものはフィヨン氏の勝利で終わるだろうという見方が強いが、昨年の米大統領選のようなドラマがフランスで再現される確率はゼロではない。秋にはドイツで総選挙が行われる。結果次第では、メルケル首相の進退問題だけではなく、EUという大きな共同体におけるドイツの立ち位置、さらにはEUそのものの存続にも大きな影響を与えるのは必至だ。