【株式分割ブーム】日立製作所・ソニー・ソフトバンク…大企業が相次ぎ表明、次はどこ?株高で個人投資家取り込み
3月に年度末を迎えた大手企業の2023年度決算(2024年3月期決算)が4月末~5月中旬に発表された。今回の決算では、円安の押し上げ効果や値上げ浸透などで業績の好調ぶりが目立ったが、実はもう一つのブームが株式分割であった。なぜ、株式分割を表明する企業が相次いでいるのか。背景を読み解く。 【表】4~5月に株式分割を発表した主な企業 (種市房子:ライター) 日立製作所は4月26日の決算発表時に、6月30日を基準日として1株を5株に分割することを発表した。4月26日の日立株の終値は1万3475円。これは1株の価格だが、投資家は1株単位では購入できない。取引所では売買できる単位が決められており、現在は100株に統一されている。 このため、最低購入金額は株価×100株ということになる。日立株の場合、4月26日の終値をベースにすれば最低購入金額は134万7500円。5分割すれば1株=26万9500円となり、投資のハードルが一気に下がる。 日立だけではない。三井物産やソフトバンク、ソニーグループ、三井住友フィナンシャルグループも決算発表時に株式分割を発表した。 分割する単位は様々で、これにより発行済みの株式数は増えることになる。たとえば、1株を2株に分割すると、既存の株主の持ち株数は自動的に2倍になる。一方、理論上、1株の価値は半分になるため、所有する株式合計での資産価値は変わらない。 ちなみに、株式を分割するかどうかは、その会社の取締役会で決めることができる。
■ NTT株の25分割で話題に 株式分割の動きが活発になったのは、2022年10月に東京証券取引所が出した要請文「投資単位の引下げに係るご検討のお願い」だ。当時は、岸田首相の「資産所得倍増プラン」が喧伝され、社会全般に株式投資への熱が高まっていたころだ。 東証は、個人投資家が参加しやすい最低購入金額を「5万円以上50万円未満」としている。要請文を出した当時、東証上場企業の約95%が最低購入金額50万円未満だったが、100万円以上の「値がさ株」もあった。 「値がさ株」とは最低購入金額が高い株のことで、50万円超というのが一般的だ。要請文が出た当時、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの最低購入金額は800万円超、半導体の代表銘柄である装置製造の東京エレクトロンは400万円近くあった。 東証は、要請文で「投資単位が高い水準にある上場会社の皆様におかれましては、投資単位の引下げに向けて、株式分割の実施をご検討くださいますようお願い申し上げます」と記載。要請文発出と前後して、任天堂やファーストリテイリング、東京エレクトロンが相次いで株式分割を発表した。 大手企業における株式分割の決定打となったのは、2023年5月にNTTが発表した25分割だ。発表当時の最低購入金額は約40万円。25分割すれば1万円台で購入できると話題になった。2023年は、三菱商事やデンソーなども相次いで株式分割を発表した。