『違国日記』瀬田なつき監督 初めて会った時から新垣さんは槙生ぽかったです【Director’s Interview Vol.414】
エドワード・ヤンとスピルバーグ
Q:撮影の四宮秀俊さんとは映画では初タッグかと思いますが、撮影はいかがでしたか。 瀬田:四宮さんとは「セトウツミ」(17 TV)「声ガール!」(18 TV)といったドラマや、ミュージックビデオなどでご一緒したことがあり、お互いの好きな映画なども何となく知っている間柄です。そういったこともあり、今回の撮影でも事前に雑談みたいな感じでアイディアを出し合い、膨らませていきました。普段の現場でも、そんなに固め過ぎずに、その場で思いついた動きや、登場人物達の自由な動きを制限することなく撮影することが多く、今回も私の演出を柔軟に捉えられる体制にしてくれました。とはいえ、脚本の流れはあるので、それをきちんと追えるように、シーン毎に方向性を探りつつ撮っていきました。 Q:槙生の部屋がリアルでしたが、あれはセットだったのでしょうか。 瀬田:あの部屋は全部ロケセットです。本当にあるマンションの広い一室に、引き戸や壁などを追加して作り込んでもらいました。普通の家よりはちょっと広かったのですが、いろいろ物が多いし、スタジオセットと違って壁も外せないので、カメラポジションを取るのが大変でした。でもその部屋で繰り広げられる二人のお芝居を見ているのは、楽しかったです。 Q:編集も担当されていますが、いつもご自身で編集されるのでしょうか。 瀬田:編集は自分でやったり、やらなかったりです。今回は自分でやった方が編集期間を長くとれそうだったので、それで自分でやることにしました。その方が、素材を何度も見ていろいろ試せるので。ただ、自分だけでやり続けていると、客観的な視点がなくなっていく気がして、今回は、大川景子さんという三宅唱監督の『夜明けのすべて』(24)などの編集をされている方に何日か入っていただいて、一緒に編集をしました。 Q:影響を受けた好きな作品や監督を教えてください。 瀬田:映画を作ってるときに思い出したのは、エドワード・ヤン監督です。『ヤンヤン 夏の想い出』(00)のように、いろいろな世代の人のエピソードが重なっていくことにより、風景が多層的に見えてくるところが好きなんです。そういうところに影響を受けているかもしれません。あとはスピルバーグも好きです、宇宙人のような異物が、さらっと現れて、いつもの暮らしが突然歪んで物語が進んでいく感じ。そこがいいなと。いつの間にか一緒に暮らしていたり。今回の朝とETを重ねるわけじゃないですが(笑)、ちょっと壊れている家族の日常に何かが入ってきて、何か新しい発見があるという。スピルバーグはそんな話が多いですよね。そこも好きなところです。 監督/脚本/編集:瀬田なつき 1979年生まれ、大阪府出身。横浜国立大学大学院環境情報学府修了後、東京藝術大学大学院映像研究科を修了。2009年、修了制作『彼方からの手紙』が話題になり、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(11)で商業長編映画デビュー。主な監督作品に、映画では『PARKS パークス』(17)、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20)、『HOMESTAY』(22)。ドラマでは「セトウツミ」(17/TX)、「声ガール!」(18/ABC)、「カレーの唄。」(20/BS12)、「あのコの夢をみたんです。」(20/TX)、「柚木さんちの四兄弟。」(24/NHK)など 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『違国日記』全国公開中 配給:東京テアトル ショウゲート Ⓒ2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会
香田史生