これぞフォルクスワーゲンの底力 新型T-Cross試乗記
一部改良を受けたフォルクスワーゲンの新しい「T-Cross」を、小川フミオがテストドライブ。印象を綴る。 【写真を見る】新型T-Crossの細部(16枚)
1.0リッター3気筒とは思えぬ走りっぷり
フォルクスワーゲンのベストセラーであるT-Cross(ティークロス)が大きなマイナーチェンジを受け、2024年7月から日本での販売が開始された。9月にメディア向け試乗会でドライブしたところ、これはかなり良い。フォルクスワーゲンのファンをはじめ、自動車好きに勧めたい出来映えだ。 T-Crossの人気の秘密は、全長4.1mとコンパクトな車体と、ハッチバックとSUVのほどよいブレンドともいうべき、軽快なボディデザインにある。加えて今回は、新しい999cc3気筒エンジンに7段ツインクラッチ変速機の組合せで、走りのよさが際立っている。 進化したT-Crossの特徴は下記の通り。 ・先進運転支援システムの強化(Travel AssistやLane Assist) ・エクステリアデザインの刷新 ・内装の改良で質感向上 ・新色3色を含む全8色の外板色 はたしてドライブしてみると、これぞフォルクスワーゲンの底力! と、私なぞはフォルクスワーゲン乗りではないくせに、おもいっきり笑顔になってしまった。 新しくなったT-Crossは、ミラーサイクル化してパワーアップをはかったターボエンジンを採用。1.0リッターの排気量とは思えない。途切れない加速で実に扱いやすく、フォルクスワーゲンのエンジン技術に改めて感心。 エンジンは2000rpmも回っていれば、軽くアクセルペダルを踏んだだけで、ぐーっとパワーを出してくれる。その感覚に不自然さがない。速度もどんどん伸びていくので、「ホントに1.0リッター3気筒なの?」と、驚くほど。 同時に、ステアリングフィールは自然で、操舵時のボディの動きもモタモタせず、気持ち良い。足まわりはボディのロールを抑えて操縦安定性を高めている。一方で、路面からの突き上げをしっかり吸収してくれる。高速での快適性も高い。 フォルクスワーゲンは一時、バッテリー駆動のEV(BEV)であるID.シリーズに傾注していた感もあったが、「エンジン車(ICE)とBEVとのバランスをとった製品展開をしていきます」(広報担当者)とのこと。 確かに、この先、「ゴルフ」の改良版(ICE)もあれば、新型「パサート」(PHEV)も控えている。エンジン車開発の実力がまったく衰えていないことを、新しいT-Crossは教えてくれた。