給食で食べられたのは白米と牛乳だけ、1人で残って食べ続けた日々。「もっと食べなさい」と言われるのが本当につらかった【感覚過敏体験談】
給食でなんとか食べられるのは白米と牛乳。先生に「もういいよ」と言われるのを待つ毎日
加藤さんが小学生のとき、感覚過敏で最もつらかったのが給食の時間です。 ――小学生のとき、感覚過敏でつらかったことを教えてください。 加藤 とにかく給食の時間がつらかったです。教室中にいろいろな食べ物のにおいが充満して気持ち悪くなるんです。味や食感が苦手で食べられないものも多かったです。 小学校の給食で、なんとか頑張って食べられたのは牛乳と白米です。みんなは食べ終わって、休み時間遊んだりしているのに、私は1人で給食を食べ続けていました。担任の先生に「もういいよ」と言ってもらえるのをひたすら待っているような毎日でした。 ――家庭での食事は、どうしていたのでしょうか? 加藤 食べられたのは白米、チャーハン、からあげ、ギョーザ、ハンバーグ、ラーメン、フライドポテト、大根のみそ汁、ざるそばなど決まっていました。親は私が食べられるメニューを順番に作ってくれていた感じです。 これは現在でもほぼ同じです。成長すれば食べられるものは増えるという人もいますが、18歳になった今も食べられるものは増えていません。ただ、ヨーグルトや食パンなど少し増えています。 外食は今もほぼできず、ホテルに泊まるときなど外で食べる必要があるときは、コンビニで塩むすびを買って食べることが多いです。少しでも食べられるものがあって本当によかったです。 子ども時代は、食事は与えられることが多く、自分で選べることがほぼありません。「もっと食べなさい」「残さず食べなさい」と言われていたころは、本当につらかったです。 ――サプリなどで栄養補給をしているのでしょうか。 加藤 親はサプリメントを何度か試みていましたが、サプリメントのにおいが苦手で継続はできませんでした。栄養面は心配されることもありますが、それなりに身体も成長することができました。
音にも過敏。かん高い笑い声や、静かな教室に響く鉛筆の音が苦手
加藤さんは食事や給食のときなど、食べ物だけに困っていたわけではありません。 ――小学生のころ、友だちと同じ遊びをすることはできましたか? 加藤 聴覚も過敏で、騒がしい場所が苦手なんです。休み時間の騒ぐ声やかん高い笑い声などを聞くと頭が痛くなります。 私が通っていた小学校は、休み時間は必ず校庭で遊ばなくてはいけなかったんです。そのためその時間は校庭の隅など、なるべく静かな場所を見つけて、そこで静かに過ごすことが多かったです。でも一緒に静かに遊ぶ友だちはいました。 ――聴覚過敏というと、ほかにはどのような音がつらいのでしょうか。ゲームの音などでしょうか? 加藤 騒がしさだけでなく、テストのときなど静かな教室に、鉛筆で書く音が響くのも苦手です。 ゲームは自分で音量を調節できるので大丈夫です。ただゲームセンターのように騒がしい場所は長時間いるとつらくなります。 幼いころ、両親は私を喜ばせるためにテーマパークに連れて行ってくれたのですが、テーマパークは私にとっては音もうるさいし、いたるところでポップコーンなどの食べ物のにおいがしてつらい場所です。 あまり覚えていないのですが、5歳の誕生日に両親が「テーマパークに行こう」と誘ってくれたときは、「行きたくない」と断ったそうです。一般的には楽しい場所と言われるテーマパークも音や光が苦手な感覚過敏の人にはつらい場所になる可能性があります。感覚や感性はだれもが違っていて、好きな場所も多様であるとも言えますね。 私は、中学生になるまでは自分が感覚過敏であることも知らず、自分の不快感や生きづらさを伝える言葉も方法も持っていなかったので「何か嫌」としか表現できませんでした。わがままな子どもと思われることも多かったと思うのです。 お話・写真提供/加藤路瑛さん 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部 感覚過敏は、病気ではなく特性です。加藤さんは、子どものころを振り返ってみると「給食をみんなと同じ場所で食べる、休み時間はみんなで校庭で遊ぶなど、“みんなと同じ”ことをしなくてはいけなくて、感覚過敏でつらいと思っても選択肢がないことが苦しかった」と言います。 2回目のインタビューでは、加藤さんが感覚過敏と知ったきっかけと親子で起業したときのことを聞きます。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。
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感覚過敏の著者が、感覚過敏特有の感じ方や困ること、学校でのサポートなどをわかりやすく紹介。著者の母の思い・子育てへの考え方や専門家の解説も掲載。加藤路瑛著/1540円(日本実業出版社)
たまひよ ONLINE編集部