誰もが幸せに暮らせますように。110人のアーティストが集った展覧会『パレスチナ あたたかい家』レポ
中東・パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まってから約7カ月。民間人の犠牲者は増え続けており、その多くは女性や子どもだという。神奈川・登戸では、展覧会『パレスチナ あたたかい家』が5月12日まで開かれた。 【画像】『パレスチナ あたたかい家』会場風景 この展覧会は「パレスチナにいる誰もがあたたかい家で家族と幸せに暮らす」という願いから、110人のアーティストと、約70人のボランティアが集結。絵画作品をはじめ、パレスチナの状況を学ぶブックレットや、パレスチナの人から寄せられた言葉も展示されている。 発起人は、現代アーティストの木村りべかと、イラストレーターの佐古奈々花。木村は「自分のチャンネルに合わせて、パレスチナのためにできることがたくさんあると思ってもらえたら」と話していた。 企画者や参加者のコメントを交えながら、レポートする。
作品の売り上げはパレスチナの支援団体へ
会場となったのは「NAMNAM SPACE クィア・コミュニティスペース」。ピンク色のドアを抜けると、左手の壁を埋め尽くすようにして絵画やイラスト、ポスターが並んでいる。 絵画やイラストが約70点、グッズは約40点。作品は販売されており、売り上げの一部またはすべてをパレスチナへの支援団体に寄付するという。そのほか、アーティストが制作したチャリティーグッズやパレスチナのグッズも並ぶ。入場は無料で、「できる方は寄付をお願いします」と呼びかけている。 5月2日から11日間の会期で開かれており、10日の時点で来場者は1,000人を超えたという。展覧会の意図として「鑑賞だけではなく、来場者にパレスチナのことを学んでほしい」としており、本展参加者が作成したパレスチナを学ぶブックレットや、ガザのことを知りたい人に向けた映画紹介のフライヤーなども置かれていた。
「自分のチャンネルに合わせて、できることがたくさんある」
ボランティアとして参加した一人、高橋智恵はパレスチナとのフェアトレードを行なっている。本展にはパレスチナの手工芸品を出品した。高橋は、大学時代にパレスチナに留学、ホームステイをした経験から、文化や人に魅せられたのだという。 「例えば手工芸品など、こんなの作っているんだ、という身近な共感からパレスチナに光を当てて、知ってもらいたいと思っていました。いまのパレスチナの状況をなんとかするために、小さくても行動を起こすきっかけにしてほしいと思っています」 本展を企画した木村は、「私はもともと社会活動に積極的なわけではなかったし、パレスチナのことも問題が大きすぎて、私には何もできないと思っていました」と語った。 大学時代にパレスチナ問題について勉強し、もともと関心はあったという。しかし、自分ではどうにもできない無力感から、特に何か行動することはなかった。そんななか、昨年10月、ガザを実効的に支配するイスラム勢力ハマスが越境を攻撃したのち、イスラエルが大規模な報復を実行した。5歳の娘がいる木村は、同じような年齢の子どもがけがをしたり、亡くなったりしている状況を報道やSNSで目の当たりにし、「重ね合わせてしまって、泣いてばかりいました」。 そして都心で行なわれていた、イスラエル軍の侵攻停止を求めるデモへと足を踏み出した。そこで「人が集まるパワーを感じました。実際に企業への働きかけが実を結ぶ事例もあって、市民の行動は無駄じゃない、と思えたんです」。 そして3月、本展を企画。すでにパレスチナについてSNSなどで発信しているアーティストらに声を掛け、輪を広げていった。参加者の9割以上が今回初めて木村とつながった人で、作品も描き下ろしが多いのだという。 「私もアーティストなので、展覧会という場が、いろんな人が同じ場所に集まれるところであると知っていた。そして、アートには表現の幅がある。こんなにも多くの人がパレスチナのことを真剣に考えているし、それでいて自分のチャンネルに合わせて、できることがたくさんあるということを伝えられたら、と思いました」 取材は10日に行なった。残り会期は2日。木村は8日間を振り返って、「いまは『人を殺すな』という当たり前のことすら言えないような、抑圧された雰囲気があると感じていた。でも、それはやっぱりおかしい。この展覧会に、アーティストも鑑賞者もこれだけ人が集まってくださって、それぞれに真剣な願いがあると感じた。何もしないより、何かした方がいい。あらためてそう思いました」と語った。