税務調査で否認されない「外注費」と「給与」の見分け方【税理士が解説】
大学の非常勤講師への手当てが「給与」とされた事例
前述国税情報において重要裁判例、参照裁判例とされているもの 〇給与所得の意義に関する裁判例1 京都地裁昭和56年3月6日判決(税務訴訟資料116号480ページ) TAINSコードZ116-4756 判定要旨 判示事項:所得税法28条1項にいう給与所得の意義 所得税法28条1項にいう「これらの性質を有する給与」とは、単に雇傭関係に基づき労務の対価として支給される報酬というよりは広く、雇傭又はこれに類する原因(例えば、法人の理事、取締役等にみられる委任又は準委任等)に基づいて、 非独立的に提供される労務の対価として、他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずべき給付(例えば、各種の経済的利益等)をいうと解すべきである。 換言すれば、労務の提供が自己の危険と計算によらず他人の指揮監督に服してなされる場合にその対価として支給されるものが給与所得であるということができる。 したがって、その雇傭関係等が継続的であると一時的であるとを問わず、また、その支給名目の如何を問わないし、提供される労務の内容について高度の専門性が要求され、 本人にある程度の自主性が認められる場合(国会議員の歳費や普通地方公共団体の議会の議員の報酬など可成り性質の異なるものも給与所得とされている。)であっても労務がその雇傭契約等に基づき他人の指揮監督の下に提供され、 その対価として得られた報酬等である限り、給与所得に該当するといわなければならない。 非常勤講師であっても、「カリキュラム」という指揮命令に従わなければならなかった 判示事項:大学が非常勤講師に支給する手当(報酬)は、給与所得に該当すると認定された事例 認定事実によれば、本件3大学は原告を各大学の非常勤講師として任用し、当該大学が必要と認めた学科目について、委嘱の期間、担当日、担当時間数を定めて原告にその学科目の講義を委嘱し、これに対して所定の報酬を支払うことを約したものというべきである。 そして、原告は、当該大学が定めたカリキュラムの一部である特定の学科目について、週のうち特定の時限に(集中講義の場合は特定の日時に)、特定の場所で、ある程度長期にわたり継続して、当該大学の学生に対し講義を実施すべき義務を負うものであり、 その講義の内容については大学側から細部まで拘束されるものではないが、当該大学のカリキュラムを実施する教員組織の構成員として、そのカリキュラムに示された大綱には従うべき義務を有するものといわなければならず、 この意味において、非常勤講師たる原告は、当該大学の一般的指揮監督に服するものというべきである。 給与形態は「毎月定額支給」であった また、本件3大学は、非常勤講師の勤務に対する報酬について、支給規程を設け、これに基づき講義時間数に応じた月額の手当額を定め、毎月所定の日に定額支給していたものであり、 右手当は夏季、冬季等の休暇中でも支給され、休講等があっても減額されることはなく、講義の優劣等はその増額の対象となっていない。 以上のような勤務形態を前提とすれば、本件手当は、非独立的に提供される労務の対価たるもので、その労務の提供が自己の危険と計算によらず、他人の指揮監督ないしは教員組織の構成員としてその支配に服してなされるものとして、給与所得に該当すると認めるのが相当である。