健康診断の基準値にこだわる医者は「良い」医者か? ヨボヨボにならないための心得で自分を守る
日本の医療のしくみそのものに薬漬けの原因があると知ったら、絶望する方もいるでしょう。でも事実を知ることで、自分に合う医療や医者に出会える可能性も高まります。 【続き】た医者から押しつけられた基準値ばかり気にしてはいけない 残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』です。 今回は本書から、薬をたくさん出す医者が増え続ける現実と、それとは逆に、薬を必要としない県民を増やし健康長寿県となった長野の取り組みを紹介。医者や病院の見分け方が見えてきます。
基準値引き下げで患者も薬も増加
実は、日本の臓器別専門医療と基準値第一主義、そして、高齢者が薬を5種類も6種類も出されるような多剤処方のいわゆる「薬漬け医療」は、切っても切れない関係にあります。 薬漬け医療が蔓延するのは、金儲け以上に医学教育の「専門分化主義」に問題があると私は考えています。実際、薬を使うほど接待や研究費が増える大学病院の医局と違って、一般の医者の場合は医薬分業(薬を医院や病院で処方せず、調剤薬局で処方するシステム)になって薬を多く出しても収入が増えなくなりました。 なのに、薬の使用が減らないのは、それぞれの医者が基準値に基づいて薬を処方し、薬の重複や相互作用を防ぐような機能が果たされていないからです。そして、基準値を引き下げれば引き下げるほど、患者が増え、使う薬も増えてしまうというわけです。日本のほとんどの病院は、基準値によって患者をつくりだすことで経営が成り立っています。 問題は、大学病院で医者を教育する立場の医者のほとんどが、特定の臓器の専門家ということです。そういう人たちが医学教育を牛耳っている以上、受けた教育に忠実な、マジメな医者ほど薬をたくさん使ってしまうことになります。これでは、制度を多少改革した程度では、焼け石に水でしょう。
健康長寿県の病院が行っている患者を減らす取り組み
一方、国民健康保険の直営の病院や診療所の場合、地域の住民が医療費を使わないこと自体が国保の財政にとっていいことなので、無理に患者さんを増やす必要はないのです。健康長寿県として知られる長野県には、こうした国保直営の病院が多くあります。諏訪中央病院の名誉院長・鎌田實先生が食事や運動で健康づくりに取り組み、脳卒中にならないようにする一次予防に力を入れることができたのも、国保直営の病院の利害と一致したからだと思います。 かつて鎌田先生は、東京の大学病院に勤務する同級生の医者から、「病気の予防に取り組んだ結果、患者数が減ってしまったら、赤字の病院がますます赤字になる」と冷ややかに指摘されたそうですが、これこそ一般の病院経営の発想でしょう。 しかし、国保直営の諏訪中央病院では、地域の人の「病気になりたくない」という思いと、病人を増やすよりも医療費を抑えることのほうが経営として成り立つという病院側の事情が一致し、地域に不可欠な病院となることで徐々に黒字を出すことができたと言います。