「ツタヤ図書館」問題で浮上する「司書」の重要性
レンタル大手「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する公共図書館で、さまざまな問題が指摘され始めている。国内で初めてCCC運営の図書館を導入した佐賀県武雄市では、関連会社から中古本を購入していたことが発覚。国内2例目の神奈川県海老名市でもCCC側の選書や本の分類に疑問の声が上がった。問題を受けて、愛知県小牧市では住民投票の結果、「ツタヤ図書館」の導入の反対票が賛成票を上回った。いわゆる「ツタヤ図書館」は、共通する課題があるのだろうか。図書館情報学が専門の慶応大学文学部、根本彰教授に聞いた。
増加する「指定管理者制度」による図書館運営
CCCは、公共施設の管理・運営を民間に委託する「指定管理者」という制度で、行政から委託を受けて図書館を運営している。指定管理者制度による図書館運営はCCCだけでなく全国で実施されており、その数は年々伸びつつある。日本図書館協会の調査によると、昨年度までに指定管理者制度を導入した図書館数は県立・市町村立を合わせて430。今年度からは各市町村の44図書館で導入され、全公立図書館の約15%が民間企業などに運営されていることになる。 民間が図書館を運営することには、民間ならではの効果もある。CCCが運営する武雄市の図書館の場合、初年度約92万人、昨年度は約80万人と、当初の見込みを遥かに上回る来館者数があり、市は年間の経済効果を約20億円と算出した。 今回の「ツタヤ図書館」問題について根本教授は、選書や本の分類の問題が発覚したが、「自治体や他の指定管理者の図書館がきちんと運営がされていたかは調査・検証が十分なされてきたわけではなく、CCCだけの問題なのかはわからない。報道がやや大げさに伝えられている感はある」と話す。「例えば鉄道をテーマにしたフィクション小説を鉄道の棚に入れることなどは、利用者にとっては使いやすい場合もあり、従来の図書館でも取り入れていることがある。通常、図書館の分類はデータベースに沿った機械的なものなので、(ツタヤ図書館の)独自の分類をすること自体は、利便性向上のために柔軟にやっていると考えることもできる」