「ツタヤ図書館」問題で浮上する「司書」の重要性
軽んじられる「司書」の役割
一方で、根本教授は、CCCなど民間企業が運営する指定管理者制度では、図書館の専門職としての「司書」が軽んじられ、地域住民が必要とするサービスが低下してしまうことも考えられると指摘する。指定管理者制度で民間企業などに図書館業務を委託する場合、無料のサービスで利益を出すためには経費削減へ向かう傾向があり、最も経費のかかる人件費を削ることにつながるためだ。 「司書は本来、図書館のある地域特有の事情や住民のニーズをよく把握した上で、その地域に必要な情報の提供、学校の総合的な学習の授業の資料提供、データベースや目録の作成などさまざまな地域サービスを担う専門性の高い職業。日本では市町村の図書館には専門職としての司書はあまり配属されておらず、民間運営となれば専門職で正規職員の司書の採用はより少なくなるのではないか」 根本教授によると、全国で年間1万人ほどの人が司書資格を得ているが、実際に専門職の司書として図書館に採用されているのは年に数十人程度。県立図書館では正規職員の採用があるが、市町村の図書館では多くが非正規や短期雇用の職員だという。大学院の修士号が司書資格取得の条件となるアメリカでは司書の給料は高く、市町村の図書館にも専門職として配属されている。 根本教授は、書店がなく図書館しかない地域が多いアメリカとは異なり、日本の場合は書店ができた後に図書館ができた例が多く、図書館が書店と同じ扱いで考えられているのではないかと指摘する。「(CCCの場合)よく利用される、売れているものを置くノウハウはある。しかし、地域固有の事情や住民に必要な情報を理解して資料を提供するような、専門的なサービスをどこまでやるのかが課題」。武雄市の図書館では、郷土資料が廃棄されたとして住民による苦情もあった。根本教授は「司書は配属されてすぐに専門的な仕事ができるものではない。人材育成に時間も必要」として、短期間雇用で入れ替わりの激しい職員雇用のあり方には疑問を投げかける。