「ツタヤ図書館」問題で浮上する「司書」の重要性
民間から「市営」図書館に戻す自治体も
指定管理者制度を利用する自治体が増加する一方、民間委託後に再び「市営」図書館に回帰する例も見られ始めている。日本図書館協会の調査によれば、指定管理者制度導入後に再度市町村が直営に戻した例は10県12図書館でみられる。 山口県下関市では2010年度から指定管理者制度を導入し、市立中央図書館の運営を民間企業に委ねてきたが、今年度から再び図書館を「市直営」に戻した。市は昨年の市議会9月定例会で「開館時間の延長、開館日数の増加が図られるとともに、利用者数や貸し出し冊数が増加した」と指定管理者制度のメリットを評価する一方、「公立図書館は収益を目的としない市民サービスであるため、指定管理者による運営では効率化を図るために人件費部分を抑制することになる」と説明。市営に戻して職員を増員し、地域住民へよりきめ細かなサービスを提供することを重視した。 民間が運営すること自体が問題なのではない。根本教授は「図書館をどのような場所と考えるかは、自治体側の問題。単に人を集める役割を大切にするのか、地域固有の役割を担うものにしていくのか、図書館の役割を自治体がしっかり考える必要がある」と話す。「民間に丸投げするのではなく、民間との契約のあり方も、司書を育成できる方法を考えるなどさまざまなあり方が可能なはず。指定管理者制度導入が増す中で、図書館が地域色をいかに反映できるかが今後ますます課題となるのではないか」 (安藤歩美/THE EAST TIMES)