「家族が好きって感覚は理解できなかった」徳井健太が小藪一豊に1年間、精神を叩き直されたのを機に親の愛情を実感するまでの「葛藤」
── そこからですか…。あまり人に相談せずに決めるタイプの徳井さんですが、小藪さんの言葉には素直に耳を傾けることができたんですね。 徳井さん:最初は、小藪さんに対してもまったく聞く耳を持たなかったんです。でも、小藪さんが辛抱強く、人類として生命をつなげていくところから説いてくれて「父親がつないだものを受けとり、お前の時間はこれだけあって、後の世代に引き継ぐんやで」と、生きていくうえで大切なことをたくさん教えてくれました。
それで、ガラッと考え方が変わり、「僕はいままで人を傷つけてきた」「あのひと言、ヤバかった」と過去の悪行が思い出されて…。「なんてことをしていたんだろう」と思うことが山ほど出てきました。とにかく、いまからでも遅くないのでまわりに伝えようと思ったんです。あのとき小藪さんに出会わなかったら、100%、仕事をやめていたと思います。 ── 徳井さんに、思いやりや共感の感情が! 徳井さん:本当に、「世界に色がついた」って感じです。僕の場合、いつからかも理由ももうわかりませんが、中高時代から人の気持ちを考えるひまもなく、家族の世話や家事・料理、学業、部活のマルチタスクを無感情でこなしてきました。他人への思いやりという点では、自分が考えていることだけが正解だとは限らないので、自分の考えを疑うようにしています。たとえば、以前は、他の人が「頑張れる」って言ったら、言葉通りに「頑張れるんなら、頑張ろうよ」って受けとっていましたが、「もしかしたらムリしているのかも」と、一歩ひいて考えられるようになりました。
■「僕がいなきゃダメ」鍋を焦がす妻に出会って初めて得た感覚 ── 現在、ご家族との関係は?お子さんはまだ小さいですよね。 徳井さん:子育てや家族と一緒に過ごすのは、すごく楽しいです。これまでに2人の子どもを育ててきて、再婚して今回で3人目。妻は曲も作るし、歌も歌うアーティストなので、作りこむときは何もできなくなるんです。曲を考えていて、鍋を焦がしちゃうタイプ。極端な話、僕がいないと生活まわらないし、生きていけないくらい(笑)。だから、僕がやってあげなきゃと思います。こんな感情を抱くのは初めてで、そういう意味で、妻の存在はとても大きいです。