AIの父ヤン・ルカンが相談役、「がんと戦う」Ataraxis AI
がん治療の難しさのひとつは、種類によって進行の速度が異なることにある。進行が早く高リスクなものもあれば、ゆっくりでリスクが低いものもある。その見極めは難しく、医師は治療方針の決定に苦労することが多い。場合によっては、治療のリスクががんの危険性を上回ることもある。役に立つ生理検査もあるが、結果が出るまでに数日から数週間かかることもあり、その有用性は特定の遺伝子変異を持つがん患者に限られることもある。 ジャン・ウィトウスキーは、この状況を変えたいと考えている。彼が設立した人工知能(AI)スタートアップのAtaraxis AI(アタラクシスAI)は、乳がんのリスクを高い精度で評価し、医師が積極的な治療の必要性を判断するのに役立つAI診断検査のAtaraxis Breastを開発した。ニューヨークを拠点とする同社によると、このシステムは現在多くの病院で使われている標準的な治療に比べ、精度が最大30%高い可能性があるという。 「化学療法が効かないのであれば、避けたいものだ。我々の研究結果は、年間数万人以上の乳がん患者が不必要な化学療法を避けることができることを示している」と、CEOを務めるウィトウスキーは話す。 これまでステルスモードで事業を運営してきたアタラクシスは、10月31日にGiant VenturesとObvious Venturesが主導したシードラウンドで400万ドル(約6億1500万円)を調達したことを明らにした。 「AIによって、これまで以上に効果的に治療を調整することが可能になっている。アタラクシスはこの変革の最前線におり、AIを活用して臨床上の意思決定を強化している」と、Obvious Venturesのパートナーであるローハン・ガネシュは述べている。 ■「AIの父」が顧問に ウィトウスキーは、最高科学責任者を務めるクリストフ・ゲラスと2023年にアタラクシスを創業した。共にポーランド出身で、ニューヨークに留学していた2人は、数年前にウィトウスキーが大学の医学部に在籍していたときに出会い、意気投合した。ウィトウスキーは医学の道を歩み、ゲラスはニューヨーク大学の助教授としてAIの研究に従事した。彼の大学の同僚には、フェイスブックの親会社であるメタのチーフAIサイエンティストで「AIの父」と呼ばれるヤン・ルカンがいた。ルカンはアタラクシスのアドバイザーを務め、医療病理画像から特徴を抽出するモデルのKestrelをはじめとする、技術的アプローチの開発を支援した。