森保ジャパン「最強布陣」…伊東純也を一番手に推奨、最終予選から見る“11人の最適解”【コラム】
小川が1トップで躍動、フィニッシャーに徹する割合が上田より高め
左ウイングバックは5試合でスタメンの三笘薫で順当か。1得点3アシストという結果は常に相手のマークが厳しくなった結果でもあり、ゴールという部分では数多くゴール前に関わるポジションでないことも影響しているはず。左のアウトサイドで三笘が脅威になることにより、中央や逆サイドで相手の守備に隙ができやすいという関係性を考えても外し難い。ただ、さらに強い相手との戦いを想定すると、最終的に三笘が決定的な仕事をするオプションが重要性を増しそうだ。 このポジションは三笘のほかにも中村敬斗と前田大然というタイプの異なるハイレベルなタレントがおり、森保監督としては戦術的な効果も含めて、特定の選手にあまり負担のかからないプランを立てられる。三笘のコンディションや中村の成長次第で序列の変化も起こり得るが、タイプの違う3人がハイレベルに競っていけば、対戦相手にも読みにくく、何かアクシデントがあった時にも対応しやすい。ただ、3人とも攻撃的なキャラクターであることに変わりはなく、センターバックもこなせる伊藤が復帰してくれば、守備の時間が長くなるような相手やウイングにワールドクラスを擁する相手に対して、同ポジションで使われるケースも出てくるかもしれない。 2シャドーは目まぐるしく組み合わせが変わるなかで、全6試合にスタメン出場している南野拓実を2列目の軸として評価したい。ここまで3得点。目に見えるアシストはないが、中国戦で小川が決めた3点目などに見られるように、チャンスの起点になりながら、ボックス内でディフェンスを引き付けてフィニッシャーのスペースを作り出すなど、重要な働きをしている。守備面でも役割は多様であり、そうした幅広い稼働力が、豊富なタレントがいる中で南野をスタメンで使い続ける理由だろう。 もう1人を鎌田大地にするのか、久保建英にするのかは大きく意見が分かれるところだろう。個のパフォーマンスや決定的な仕事という基準では1得点3アシストの久保を推したいが、巧妙な立ち位置と正確なパスで攻撃のリズムを作り出し、ボランチから3得点を記録している守田を高い位置で絡ませる再現性を構築している鎌田を“最強布陣”の一角とした。ただ、ここはシンプルなパフォーマンス評価というより、チームのメカニズムによるところが大きく、久保も鎌田も2列目に欠かせないタレントであることに違いはない。それと同時に、三笘や堂安、前田、伊東、中村などウイングバックとのポリバレントを生かすポジションでもあるだけに、豊富なオプションを森保監督がどう生かしてアジアから世界での戦いにつなげていくのか注目したい。 1トップは上田と小川のどちらを取るか、意見が分かれるところだろう。4試合でスタメンの上田はバーレーン戦の2得点のみだが、力強さを増したポストプレーと中央のスペースを空ける動きなど、味方に点を取らせる役割で効果的な仕事をしている。一方の小川もロングボールの競り合いなどで奮闘はしているが、やはりペナ幅からボックス内にかけて、フィニッシャーに徹する割合が上田よりも高めだ。そうした結果が中国戦の2得点など、ここまでの4得点、そして記録はオウンゴールになったが、ほぼ小川のゴールと見ていいインドネシア戦の先制点などにもつながっている。また直接ボールに触ってなくても、彼が我慢強く前線に張ることで攻撃の深みを出すという効果も小川ならではのものだ。 一方で、世界を相手に点を取ると言う基準ではアウェー中国戦の終盤に見せた古橋亨梧のフィニッシュワークは上田や小川にもない特長があるだけに、この決定力をさらに生かせるビジョンをチームとして構築できれば、本大会に向けて武器になっていく期待も覗かせる。 最終予選の折り返しというところで、今回の“最強布陣”を考案してみたが、予選突破が懸かるホームのバーレーン戦をはじめとした残り4試合、そして世界での戦いに向けてもっと各ポジションがレベルアップしていかないと、本大会での躍進は望めない。本来は森保ジャパンの主力を張るべき冨安や伊藤の完全復活、なかなか主力に食い込めていないパリ五輪世代も含めて、まずは来年3月までクラブレベルでの評価アップや新たな選手の台頭に期待していきたい。 [著者プロフィール] 河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji