令和のBLのスゴさを目の当たりに…「もはや暗喩としてのキスではないか」ドラマ『未成年』に見る“恐るべきアップデート”とは《本日最終回》
「初めて正解を観た!」目からウロコの名シーン
二人の恋はもちろん順風満帆にはいきません。水無瀬は両親の離婚に伴い、留学を勧められることに。「行かないで」と伝える蛭川。障壁を前に、恋が動き出します。特に好きだったのは第6話の夕日の海のシーン。 蛭川「お前がアメリカに行った後、どうしよう」 水無瀬「行かない」 蛭川「行けよ」 水無瀬「お前が行くなって言ったんだろ」 蛭川「それはただの本音じゃん。行かないの、だめだから」 ~ハグ~ 蛭川「行かないで……」 マジか……。好きな人に対して別れ話を切り出したりするなど、“優しい嘘”を伝えることで、相手の背中を押すシーンはこれまでもいろんな作品で観てきたけど、初めて正解を観た気がしました。優しい嘘とか、いらない。本音と建前、両方伝えたらいいんじゃん! 今後これをほかの作品は見習ってください! 目からウロコでした。そしてこれも美しいシーンでした。
「もはや暗喩としてのキスでは」BLにおける性描写の新境地
これまで、原点回帰、シンプルで王道の強さ、古典的で安定感のあるラブストーリーの表現をアプデし、目の肥えた視聴者を惹きつけている点を挙げましたが、魅力的なポイントはもちろん役者自身にも。本島純政と上村謙信の相性の良さ、素晴らしすぎませんか? それは正反対な性格を一目で理解できる原作へのビジュアルの寄せ方、わかりやすい身長差、オフショットとして共有される画像や動画から伝わる仲の良さなど、さまざまな場面から窺えます。 そして映像にしたときの演出の美しさ。全体的な質感が映画のようで、世界観にしっかりのめり込めるように作られている本作。第一話から効果的に「水」が使われています。蛇口の水があふれ、蛭川の頭に盛大にかかるシーンは誰もが目を奪われたことでしょう。水無瀬もこの時点で相当ドキッとしたのではないでしょうか。 夜中の公園で蛭川の頬に手を当てながら水無瀬がペットボトルの水を飲ませるシーンなんかはもう、暗喩としてのキスそのものです。過度にセクシュアルなシーンを作らなくとも、BLとしての「観心地」のある場面は作れる。勉強になります! また、キスシーン、ベッドシーンなどでは効果的に青色がでてきます。それは先述の海のシーンを彷彿とさせ、波が二人の孤独を優しく包み込むかのよう。この視覚的効果は、普通のシーンとインティマシーシーンの空気の切り分けにも役立っています。だからこそ視聴者としても「くるぞ」という緊張感、高揚感が余計に高まるのです。