<箱根駅伝>青学はなぜ圧勝で連覇を果たせたのか?
今回もアオガクは強かった。圧倒的に。一度もトップを譲らない完全優勝は39年ぶりの快挙。第92回の箱根駅伝は青学大の連覇で幕を閉じた。ディフェンディングチャンピオンが圧勝できた理由はどこにあったのか。 過去最速タイムで独走した前回メンバーのうち、卒業したのは8区と9区だけ。今季は1万m28分台ランナーを11人揃えて、その穴を埋めるだけの戦力は十分にあった。登録選手上位10名の1万m平均タイムは、前年から約13秒も上昇して28分35秒60に到達。一方、ライバル校は駒大が28分53秒81、東洋大が29分02秒07と両チームとも前年よりタイムを下げていた。 そして、「山の神」こと神野大地の存在も大きかった。選手層が厚く、5区で爆発的な力を持つ青学大に勝つことはできないと、青学大の独走Vになると読んでいた関係者は多かった。しかし、優勝候補の重圧を経験しているある大学の指揮官は、「今回、勝ったら本物だよ」と話していた。それだけ、大本命の優勝は難しいのだ。 青学大・原晋監督も「シーズン前半は今回も楽勝という雰囲気だったんですけど、箱根が近づくにつれて監督の私自身、選手にもプレッシャーがかかってきたんです」と振り返る。 「山の神」という十字架を背負った神野はケガに苦しみ、出雲と全日本で区間賞を獲得している「駅伝男」の久保田和真は12月に調子を落として、レース1週間前にはスタートラインに立てるか微妙な状況だった。それでも、「久保田は4日前のポイント練習を終えたあたりから、ぬいぐるみを剥がしたかのように急に良くなったんです」と原監督。連覇の重圧が最もかかる1区を「個」の力で押し切った。 全国高校駅伝1区で区間賞に輝くなど大舞台では絶対に外さない久保田が持ち味を発揮。 1区は予想以上のハイペースになり、“レース運”も味方した。「総合5位以内」を目標に掲げていた中央学大のエース潰滝大記がライバル校を引き離そうと、5キロを14分13秒で引っ張り、高速レースに持ち込んだのだ。このペースに“チューニング”が最も合ったのが久保田だった。青学大が誇るスピードスターは終盤に抜け出して、歴代3位の1時間1分22秒で走破。東洋大・上村和生に53秒、駒大・其田健也に1分50秒という大量リードを奪うことに成功した。もし、潰滝が前に出なければ、落ち着いたペースになり、これだけのタイム差にはならなかっただろう。