HOMEが語る、今を生きるバンドが考える「モダンポップス」
2023年8月に突如「Lucy」をリリースし、一発で多くの人の心を射抜いた。私も「このバンドは何者だ?」と、たった1曲から非常に気になった。しかし、その時点では情報があまりに少なかった。沖縄を拠点に活動する3人組・HOME。2枚目のEP『HOME EP2』を発表したタイミングで、「Lucy」をリリースする前のことからじっくりと話を聞き出し、オルタナティブロックやビートミュージックを混ぜながらトレンド最先端をいく彼らの美意識と鋭い音楽的センスについて探らせてもらった。 ―HOMEにとって、音楽を作るうえでのいちばんの原動力は何ですか? o-png(PC):「ビビらせたい」かもしれないです。まず、メンバーの2人をビビらせたい。まだないものを発明したい、みたいな気持ちで音楽をやっているかなと思います。 shun(Gt):僕はどちらかというと「めっちゃいいものを作りたい」という視点が強くて。もともとロックバンド育ちの人間なので、純粋に「いい曲」みたいなものに惹かれちゃうんですよ。僕の軸には「グッドソング」「グッドメロディ」があって、『HOME EP2』でいうと「Memories」はその意識で書いた曲です。でもギタリストとしては「発明」みたいに弾くことが面白かったりもします。 seigetsu(Vo):最終目標は、俺の歌で人を殺したいです。 shun:すごいなあ、めっちゃいいね。 seigetsu:(歌は)人の心を動かす最大のエネルギーだと思うから。救うこともできるし。俺の歌を聴いて自分から命を絶つという選択ができるくらいの力を持ちたいですね。 ―誰かの人生における究極の選択まで変えられるくらいの力ある歌を歌いたい、ということですよね。HOMEはデビュー曲「Lucy」から脚光を浴びましたが、そもそもどういう音楽をやろうとして集まったバンドなのか、原点から聞いてもいいですか。 shun:「Lucy」をリリースするまで、いろんなことがありすぎました。もともとは、こっち(shunとo-png)が同じ高校で、seigetsuは隣の高校の「歌うまTikTokバズりボーイ」だったんです。高2の後夜祭でRADWIMPS「そっけない」を歌っていたのを誰かが撮影してTikTokに載せて、それがめっちゃ注目されて。その噂をo-pngが聞きつけて、ちょうど2人で「ボーカリストがいたらいいね」という話をしていたので声をかけて、結成したのが2020年の高3の夏休み終わり。seigetsuは野球をやってたから、「甲子園の予選大会が終わるまではしばらく忙しい」って言われたのかも。 seigetsu:ああ、そうだったかも。 shun:ピッチャーだったもんね。結成してから1年半くらいはカバーをたくさんやって、それをひたすらTikTokとかに載せたり、YouTube配信をしたり、そういうことばかりやってました。 ―そのときは、どういう音楽をカバーしていたんですか? shun:いちばんハネたのはORIGINAL LOVEの「接吻」。あとは松田聖子、yonawoとか。 o-png:歌謡っぽいものが多かったです。もともと「yonawoみたいなバンドがやりたい」って言って集めたんですよ。その頃はチルとか、そういうムードだったじゃないですか。よりオーガニックなシティポップみたいなものをやりたかったんですよね。 ―1st EP『HOME EP』(2023年12月リリース)には、「愛のうた」とか、今言ってくれた要素が濃い楽曲もありますよね。 shun:1stは「Lucy」の前にできてたいい曲を詰めよう、という一枚だったんです。 seigetsu:「愛のうた」は、18歳くらいのときに作った記憶があります。 ―そこからどのようにして「Lucy」のサウンドにたどり着いたんですか? これを1曲目に世に放ったということは、ここで「HOMEはこれだ」と思える何かがあったということですよね。 shun:実は鍵盤がいた時期があって、2022年3月の初ライブは4人編成だったんです。それで2、3回くらいはライブをやったんですけど、2022年の夏頃に鍵盤が抜けることになって、「この三人でできることは何かな」と考えるようになったところから、それぞれが曲を書いて持ち寄るようになって。o-pngはJPEGMAFIAとかが好きで、バッキバキのエクスペリメンタル・ヒップホップみたいなものを持ってくるようになって、僕はオルタナロックとかが好きなのでノイジーな要素をぶち込みまくったりして、そうやって徐々に形が変わっていきました。「Lucy」は僕が持ってきた曲ですね。 ―どんな想いから書いた曲だったんですか? shun:めっちゃいい曲を書いたろうと思って。時代背景でいうと、The Weeknd「Blinding Lights」、The Kid LAROI & Justin Bieber「STAY」、Vaundy「踊り子」とかが流行ってて、それまでの音楽のトレンドはリズムがスローだったイメージがあるんですけど、そのタイミングからちょうどBPMが上がってきて、なおかつ、80’sの要素もこれまでの10年とはまた違う形で取り入れられてるなと思って。HOMEはリズムが打ち込みという制約もあるので、その中で自分が何を持ってこられるかというと、ポストパンク以降のニューウェーヴとか、キラキラした感じのポップスだろうなと。そういうところから作ったのが「Lucy」でした。でも最初はメンバーから嫌がられた気がします。そもそもHOMEはロックバンドではなかったもんね。 o-png:僕らが作っていた曲の中で「Lucy」だけ違ったので、最初は「どうやって手をつけたらいいかわかんない」みたいな感じだったんです。でもライブでやっていくごとにどんどんフィットしていって、最初の曲がようやくできたのかなと思います。「Lucy」はHOMEにとって革命みたいな曲ですね。