PassCodeが新章突入 レーベル移籍、海外ツアー、成長と葛藤を南菜生が語る
自分たちの力で状況を変えてきたという自負
しかし、前述のとおり、PassCodeの悩みは尽きない。いまだに偏見の目で見られることが多い。アイドルはオトナにやらされているもの――。だから、恒例の対バン企画「VERSUS PASSCODE」を組むのもひと苦労だという。まず、どういう気持ちでPassCodeをやっているのか、どういう想いをもってステージに立っているのかを対バンを希望するバンドのメンバーに南が説明し、いざ対バンが決まれば、日時や会場についてまずは彼女からバンドへ直接確認の連絡をする。初手の段階ではできるだけ事務所を挟まず、ストレートに己のアティチュードを示し自分たちに対する偏見を払拭することでイベントが成立し、毎回とんでもない化学変化を起こすのだ。こういった行動も、回を重ねるごとに南自身が必要だと感じて動いた結果だ。 だからこそ、南はPassCodeのことだけでなく、現在のアイドルシーンについても気に掛けることが多い。 「アイドルと呼ばれる形態のグループって、いまだに自分の意見が言いづらかったり、オトナから言われたことをやったりすることが多いけど、自分の納得いく形でグループを進めることができれば、人生はより豊かになると思うんです。そういうグループが増えてほしいなって思う。PassCodeはアイドルだ、アイドルじゃないみたいな話は今でもあるけど、少なくともアイドルとしての可能性を広げてるグループではあると思うから、PassCodeは別だとは思ってほしくないし、ああいうやり方をすればそうなれるんだ、みたいな目標にしてもらえたらなって。実際、『それができるのは菜生さんだからですよ』って言われることも多いけど、私だって最初からこんなことができたわけじゃないんですよ。何年もかけてスタッフやチームの人間との関係を構築したからこそ話を聞いてもらえるようになったし、自分たちのやりたいことを諦めなかったからこそ、今、こうなれてるんだと思う」 さらに踏み込んで南は語る。 「今、アイドルって簡単に始められるし、お金もある程度稼げるようになっているけど、たとえば、18歳でアイドルになった子が28歳になったときのことまで想像してその子の人生考えてる?ってオトナに対して疑問に思うことがすごく多い。私はもちろん運営側の人間ではないけど、PassCodeのメンバーに対してもそういうことは常に意識してて。もし、いつかPassCodeの活動が終わる日が来てメンバーが第二の人生をはじめるとして、どこかのレーベルとか会社から『この十数年、あなたは何をやっていたんですか?』って聞かれたときに、『PassCodeというグループをやってて……』ってそれまでの活動の長さに見合った充実した人生を送ってきたって胸を張って言えるようなグループ活動をしたいんです。それが自分の中にあるPassCodeとしての目標のひとつ。だから、そういう意味でもまだまだ終われないんですよ。もちろん、自分ひとりの力ではどうにもできへんけど、アイドルグループにもメンバーが主軸になって仕事を進められる形があるっていうことをたくさんの子に知ってもらいたい。そうすれば、『操り人形』っていう言い方をされないグループが増えるんじゃないかと思うし、そうなってほしいなってずっと思ってます」 彼女がここまで言うのは、少なくともPassCodeは自分たちの力で状況を変えてきたという自負があるからだ。 「やっぱり、表に出て発言をしてファンの人に信頼してもらうことができるのってメンバーじゃないですか。そのメンバー自身が納得していない仕事をしてしまうと、いざというときに自分たちが本当に伝えたかったことが伝わらなくなっちゃうんですよ。PassCodeの場合、細かいことの積み重ねによって『あの人たちがそう言ってるってことはきっと何か考えがあるんだろう』ってファンの人から信頼してもらえるようになってると思っていて。だから、PassCodeで『こんな話があるんですけど……』っていうオファーを受けたとき、場合によっては『PassCodeとしての見え方的にも、ファンの人たちの捉え方的にも私は絶対やらないほうがいいと思う』みたいなことをちゃんと言います。でも、それはチーム内でしっかりとした関係性が築けてるから話を聞いてもらえるんであって、何もない中でそれをやっちゃうとただの面倒くさいメンバーになっちゃうから、そこは難しいところではあるんですけどね」 正直、圧倒された。長年、筆者はPassCodeの活動を見てきてはいるが、まさか彼女がここまでのことを考えているとは思わなかった。それは彼女のことをナメていたということではなく、こんなことを考えているアイドルに生まれて初めて出会ったからだ。しかも、これはあくまでも南の視点。当然、高島楓、大上陽奈子、有馬えみりにもそれぞれの想いがあり、そういった想いのすべてを支えるチームがいることでPassCodeというグループは成り立っているのだ。 PassCodeはアイドルなのか、バンドなのか――彼女たちがバンド編成でライブをするようになった2016年以降、10年近くにわたって延々と議論されてきたことだ。その答えはいまだ出ていない。しかし、PassCodeはアイドルでありバンドでもあるが、今回南の話を聞きながら思ったのは、もはやPassCodeはアイドルでもバンドでもないのではないか、ということ。つまり、彼女たちはただ“PassCode”であり続けようとしているのだ。アイドルとしての方法論もバンドとしての方法論も彼女たちに100%フィットすることはない。だから、自分たちなりの正解を常に導き出さないといけない。それはイバラの道で、彼女たちはこれまでずっとそれを続けてきた。だからこそ、今のPassCodeがあるのだ。 リスケになってしまったアメリカツアーにPassCodeを誘ったアメリカのプロモーターと対面したときに彼が残した言葉が今も心に残っている。彼はこう言った。「PassCodeにはバックバンドがいて4人がフロントで歌って踊っているけど、たとえバックバンドがいなくても、PassCodeはこの4人だけですでにバンドだ」。彼の中にあるであろうネガティブなアイドル像を考慮して解釈するなら、PassCodeは決して誰かの操り人形ではないということだろう。その認識は正しいし、彼女たちのアティチュードが言語の壁を越えて伝わっていることに感動した。 南の話をすべて聞き終えたあと、妙に興奮している自分がいた。それはPassCodeの新章がはじまる予感が確信に変わったからだ。新たに始まる国内ツアーとアジアツアーで4人がどんな景色を見せてくれるのか。そして、新たな環境でどんな活動をみせてくれるのか。期待しかない。 『PassCode Asia Tour 2024』 10/10(Thu)[Beijing]To Be Announced 10/12(Sat) [Guangzhou] To Be Announced 10/13(Sun) [Shanghai] To Be Announced 10/27 (Sun) [Taipei] CORNER MAX 11/9(Sat) [Seoul]West Bridge Live Hall 11/10 (Sun) [Seoul]West Bridge Live Hall 12/17(Tue) [Tokyo] Zepp DiverCity 12/19(Thu) [Aichi] Zepp Nagoya 12/21 (Sat) [Osaka] Zepp Osaka Bayside
Daishi "DA" Ato