ホテルの運営主体が入れ替わる「リブランド」が九州で相次いでいる。従来、国内では施設の保有と運営を一体的に行う事業者が多かったが、運営だけを他社に任せる「分業化」が普及してきたからだ。訪日客の急増で盛り上がる宿泊需要を取り込もうと、海外の大手ホテルチェーンが運営に参入するケースも目立つ。今後も広がっていきそうだ。（橋本龍二） 【図表】分業化のイメージ

衣替えで高級感

リブランドで高級感が演出されたレストラン（8月、大分県日出町のグランドメルキュール別府湾リゾート＆スパで）

　全国有数の温泉地・大分県別府市。隣接する日出町の海沿いで「ホテル＆リゾーツ別府湾」として親しまれてきた中堅ホテルが今年4月、仏大手のアコー社が世界展開する上級ブランド「グランドメルキュール」に衣替えした。レストランや客室の一部は改装で高級感が演出された。

　保有と運営を一体的に担ってきた大和ハウスグループが2023年、東京の資産管理会社「恵比寿リゾート」に譲渡し、同社が運営をアコーに委ねた。恵比寿リゾートは実質的な「大家」で、アコーは建設費を負担することなく進出を果たし、人員の確保やサービスの充実といった運営に集中する。

　訪日客が急増する日本でホテル業界は有力な成長市場だ。110以上の国や地域で5700超のホテルを展開するアコーは今春、日出町に加え、福岡県宗像市、佐賀県唐津市など、全国で計22施設を一気に開業した。いずれも運営のみを担う方式で、日本法人のディーン・ダニエルズ代表取締役は「コストを抑えて需要を取り込める」と語る。

「分業」でサービスに集中

　海外ではホテルの保有と運営の分業化は早くから進み、大手チェーンは主に運営で世界展開を進めてきた。九州でも米大手のヒルトンが10年から福岡市の「ヒルトン福岡シーホーク」の運営を担う。同じく米大手のマリオット・インターナショナルは、福岡、沖縄両県で26年、計3施設のホテルを開業予定だ。

　運営会社は、施設の維持や管理にかかるコストや人員を減らすことができるため、サービスに集中してブランド力を高めやすい。国内での代表例は星野リゾートで、00年代初頭に山梨県内のホテルの運営権を譲り受けて以降、運営に重点を置いて成長を続けている。