九州でホテルのリブランドが相次いでいる

　保有する側にとっても、運営をブランド力の高い企業に任せれば収益の増加につながるメリットがある。コロナ禍での厳しい経営を経て国内でも浸透しており、東洋大の徳江順一郎准教授（観光学）は「地域の独自色が薄まる懸念はあるが、外資系のブランドは世界中に会員を抱えており、訪日客の需要を取り込みやすい」と指摘する。

部屋分譲で宿泊料金が収益に

　ホテルの「所有権」に注目した新たなビジネスも生まれている。東急グループは今年4月、沖縄県豊見城市に開業したホテル「ストーリーライン瀬長島」で、客室をマンションのように分譲販売する事業に乗り出した。ホテルとして東急が運営し、宿泊料金の一部がオーナーの収益になる仕組みだ。ホテルとしての利用がない期間はオーナーが宿泊することもできる。

　1室あたりの分譲価格は4300万～3億円台で、全101室が完売した。東急にとっては建設費の早期回収につながり、ホテル運営による収益も見込むことができる。ホテル事業を担当する山崎之裕氏は「新ビジネスとして今後、福岡市などの都市部での展開も検討したい」と話している。

集客戦略の多様化でサービス充実

　リブランドによる集客戦略の多様化は、消費者にとってサービスの充実につながっている。

　宿泊施設の再生事業を手がける福岡市の新興企業「C＆G　バリューデザイン」は今月、佐賀県唐津市の老舗旅館「魚半」の運営を受託した。来年7月、ホテルとしてオープンする計画で、半露天の大浴場を設置するほか、築60年超の本館を全面改装して吹き抜けのロビーをつくる。

　鹿児島市で昨年5月にリブランドした「クインテッサホテル鹿児島天文館リラックス＆スリープ」は、ベッドに高級マットを配備するなど、快適な睡眠につながるサービスに力を入れた。同系列で同6月に改装オープンした北九州市の「クインテッサホテル小倉コミック＆ブックス」はロビーに1万冊の漫画を用意し、10冊まで自室に持ち込める。

　昨年7月に福岡市で開業した「ホテルサードプレイス博多」は、家族向けに最大10人が宿泊できる部屋を備えるほか、全客室でコインランドリーの混雑状況を確認できる。