衆院選埋もれた争点 三都物語で掲げた「地方分権=憲法8章」改正の意味は?
10日に公示された衆院選では安倍政権の継続、消費増税の是非などが主な争点として各党の論戦が始まっています。この選挙で台風の目になると見られた「希望の党」は公約で「地方分権」の推進を強調、憲法改正も地方自治に関する「第8章」の改正を前面に打ち出していました。 政界揺るがす“勝負師”小池百合子氏とは 坂東太郎のよく分かる時事用語 しかし、結党後の党の失速感や東京、大阪、愛知が連携する「三都物語」の不協和音とともに、争点としては埋もれてしまっているようです。一体どうなってしまったのか、その理由と意味を考えてみましょう。
2項目で地方分権に触れた「希望」
希望の党は政策集で2項目にわたって地方分権、憲法8章改正に触れています。 「地方に希望を」と題した項では、「地方自治に関する憲法第8章を改正し、『地方でできることは地方で』行うとの分権の考え方、課税自主権、 財政自主権などを位置付ける」のほか、「道州制導入を目指し、国の権限と財源を移していくことにより、道州レベルで、また世界レベルで競争するダイナミズムを創りだす。まずは公共事業に関する権限と予算を地方移管する」「政令市が都道府県からの独立性を強める特別自治市の実現を図る」などと明記しています。 また、「憲法に希望を」の項では、上記の憲法8章改正を第一に再掲し、「原発ゼロ」や自衛隊の位置付けよりも強調。小池代表も10月6日の公約発表時、憲法改正について「これまで護憲か改憲かの議論だけで議論そのものも深まってこなかった。国民の知る権利や第8章の地方分権を明記すべき」と述べていました。 ただ、その後の党首討論や街頭演説では、小池代表自身が「安倍批判」色を強め、他党もあえて争点化する姿勢は見せていません。
8章改正を持論としてきた大村知事
小池代表は希望の党結党間もない9月30日、日本維新の会代表で大阪府の松井一郎知事、愛知県の大村秀章知事とともに大阪市内で会見し、「三都物語」というネーミングで3都市の連携をアピール。その中で憲法8章改正を含めた「真の地方自治の推進」を共通政策として打ち出しました。 短い会見では政策の中身よりも「希望と維新」の候補者調整に関心が集まっていました。しかし、この「8章改正」を軸とした改革は小池氏や松井氏よりも、両者の「応援団」を自称した大村知事が、かねてから主張してきた持論です。 そのポイントは大村知事の自著や会見、ネットでの発言などから、以下の5点に集約できます。 「憲法の前文に地方分権の理念を明記」 「8章に地方政府と立法機関を明記」 「立法権、財政権、課税自主権を保障する」 「国と地方の協議の場の設置」 「国会への地方代表の参画」 中でも「課税自主権」へのこだわりは強く、アメリカやドイツの連邦州制度をモデルに、日本の地方自治体にも「連邦制並みの包括的な条例制定権や課税自主権を与えるべきだ」と2015年の著書『愛知が起こす成長革命』でも述べています。 この背景には、愛知県がトヨタ自動車を中心とした産業で日本経済を支えているのに対して、県内で生まれる税収は半分以上が国税として国に「吸い上げられてしまっている」という不満があります。そこを脱却した上で、地方が独自性を強めて活性化していくべきだという主張です。