スバル「インプレッサ」に見るスポーツハイブリッドの未来
富士重工は7月10日にスバル・インプレッサ SPORT HYBRIDを発売する。ハイブリッドと言えば、プリウスやフィットなど、エコを強調したモデルが多い。ところがこのハイブリッドの燃費が全然大したことがない。 水平対向4気筒2リッターのエンジンに10キロワット(13.6馬力)のモーターをプラスして得られる燃費は、JC08モードでリッターあたり20.4キロメートルに過ぎない。次期プリウスがリッターあたり40キロメートルを狙うという時代に、流石に拍手は贈りかねる数値である。
なぜ13.6馬力の小さなモーターを搭載?
実はこのユニット、2013年にデビューしたスバルXVハイブリッドと同じものだ。そもそもXV自体がインプレッサの車高を上げてSUV化した兄弟車なので、XVのシステムがインプレッサに移植できるのは当然と言えば当然だ。せっかくのハイブリッド・システムをある程度の台数売っていくためには、やはり名前の通ったインプレッサで勝負したいという事情はよくわかる。順当に行けば次はレヴォーグに展開されるに違いない
トヨタとの関係を考えれば、トヨタのシステムを使えば良いように聞こえるだろうが、このハイブリッドはスバルの自社開発システムだ。水平対向ユニットを使うスバルは、メカニズム・レイアウトが特殊なので、他社のシステムをおいそれと借りてこられないという事情もある。 システムを新規起こしで設計するに当たって「スバルのハイブリッドとはどうあるべきか」を考えたのだろう。モーターにできるだけ出しゃばらせないセッティングをしている節がある。スバルは万人に売れるクルマではない。ファンあってこそのスバルだ。そのファンには「スバルと言えば水平対向」と言う人が多く、アイデンティティとも言える4気筒をモーターの黒子にはしたくなかったと思われる。
もう一つ、水平対向ユニットの場合、ジアコーサ式のFFほどスペースに余裕がない。横置き4気筒FFレイアウトの場合、トランスミッションの上には少なくともシリンダー高さ分の空きスペースがあり、ハイブリッドシステムを組み込むのに極めて都合が良い。しかしスバルの水平対向の場合、FRのそれのようにトランスミッションはキャビンに食い込んでおり、その上部は空調の要となるエアコンのメイン吹き出し口へ通じるダクトや、インフォテインメントシステムのモニター、ナビとオーディオなどがスペースの奪い合いを繰り広げる激戦区だ。ここに大型モーターを搭載する余地はどう足掻いてもない。 その結果、小型小出力モーターとそれに見合う容量の小さなバッテリーで構成されるハイブリッドユニットは、プリウスのような驚愕の燃費を叩き出すものにはならなかった。 それがダメだと言うつもりはない。燃費のためにドライバビリティを犠牲にするばかりか、時にドライバーの思惑や操作と違う反応を見せるハイブリッドが多い中、それはそれで見識と言っていいと思うが、一方でファンの過大なイメージ投影がスバルのエンジニアリングに制約をかけている部分もあるように思える。