アジアで新たな通貨戦争のリスク、円安長期化なら高まる恐れ
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、パク・キス氏は、競争的な通貨切り下げに関する質問に対し「それは起こっている」と答え、「意図的であろうとなかろうと、それは起きており、他の地域にも影響を及ぼしている」と指摘した。
無秩序な円安はアジア通貨の重しに
複数の市場関係者によると、以前ほど強い影響力はないものの、無秩序な円の下落は依然としてアジア地域の通貨の重しとなり得る。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アルジュン・ビジ氏は、「最も直接的な影響としては、大幅な円安につれて、韓国ウォンや台湾ドルなど他のアジア通貨の相場が押し下げられるだろう」と指摘する。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のアジア調査責任者、クーン・ゴー氏によれば、円安が反転するまでは、韓国ウォンと台湾ドルが国内の人工知能(AI)投資ブームの恩恵を受けにくくなる可能性が高いという。
確かに、日本の当局がこれ以上の円安進行を容認しない可能性を示すサインは出ている。ドル・円相場が先週、34年ぶりに心理的な節目の1ドル=160円台に乗せた後、2回にわたって当局による介入とみられる動きがみられ、その後は155円台での安定した推移につながった。
また、アジアの国・地域の大半は1990年代後半に起こった混乱の再発防止体制を整えており、域内で金融危機の懸念はほとんどない。外貨準備の増強、金融セクターの監督強化による改革、地域資本市場の深化が背景にある。
一方、マニュライフのパク氏は、対ドルで170円から180円程度まで円安が進めば、アジア域内だけの問題にとどまらず、新興国通貨全般に影響が波及するとみる。低金利の通貨で資金を調達して金利の高い新興国通貨に投資するキャリー取引で、調達通貨としての円の役割が大きな要因として挙げられる。
リターン際立つ円キャリー取引、ボラティリティーが阻む恐れ