「適度な不安」はあなたの仕事のパフォーマンスを向上させる
過度の不安は有害であることがよく知られているが、あまり知られていない事実がある。それは、適度な不安が実際に仕事のパフォーマンスを向上させるということだ。ハリウッド俳優であり起業家でもあるライアン・レイノルズは、不安との闘いを公にしており、この考えに同意している。彼は最近、ピープル誌のインタビューで「僕の仕事には不安が大いに役立っています」と認めた。さらに彼は「不安を抱える人は常に未来を考えていて、『これが起こったらどうしよう? あれが起こったらどうする?』と、常に自問自答しています。不安は僕が通常持ち得ないような意識のエコシステムを作り出してくれるのです」と語った。 研究によると、仕事のパフォーマンスには「不安のスイートスポット」が存在するということが裏づけられている。この概念は、心理学者ロバート・ヤーキーズとジョン・ドッドソンが提唱した「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」に基づいている。この法則は、左側に低覚醒(ストレスが少ない状態)、右側に高覚醒(ストレスが多い状態)を配置したベルカーブで表される。曲線の中央が「最適な覚醒状態」と「最適なパフォーマンス」を示す。タスクによって異なるが、ストレスは一定の範囲内ではモチベーションを高める。しかし、その範囲を超えるとパフォーマンスが悪化する。 ■不安はモチベーションを高める ストレスが少なすぎると、最高の仕事のパフォーマンスを発揮することが難しくなる。実際、仕事での集中力の低下や退屈感につながることがある。一方で、適度な不安は新たな挑戦に立ち向かうための助けとなる。ストレスがかかると、ドーパミン(目標達成へのモチベーションを高める神経伝達物質)が分泌されるからだ。ストレスは神経を高ぶらせ、未来の出来事を考えるように促す。たとえば、締め切りが迫っている状況では、不安がプロジェクトを期限内に完了させるための集中力を高める。 ■不安は記憶力を向上させる ウォータールー大学の研究によると、適度な不安は記憶力の向上にも寄与する。この研究では、ボランティアに性格に関するアンケートを行い、その結果に基づいて低不安群と高不安群に分けた。その後、両グループに一連の単語を、中立的な画像やネガティブな画像(たとえばクルマの事故)を背景にして提示した。その結果、高不安群の方が単語をよりよく覚えていた。不安を感じることで、物事をより鮮明に記憶することができるのだ。 ■不安は高いIQと関連している 研究によると、不安は高い知能と関連している可能性がある。ある調査では、高IQ団体である「メンサ」のメンバー3000人以上を対象にしたところ、20%が不安障害の診断を受け、さらに26%が他の気分障害の診断を受けていたことがわかった。また、Frontiers in Evolutionary Neuroscience誌に掲載された別の研究では、全般性不安障害(GAD)を持つ人々は心配する傾向が強く、IQが高い可能性があることが示されている。さらに、3番目の研究では、不安レベルが高い学生ほど試験で高得点を取る傾向があることが明らかになった。 不安にはネガティブなイメージがあるが、職場で適度な不安を感じることには多くのメリットがある。不安は、タスクに集中し、問題を予測し、課題を克服するためのモチベーションを高めるのだ。重要なのは、最適な不安と仕事のパフォーマンスを妨げる不安との境界を見極めることである。不安を受け入れ、それをうまく活用することで、内なる強さや共感の源となる力を得ることができる。
Caroline Castrillon