絶対に落とせない最終局面「ゾーンに入った」/松山英樹がパリ五輪を語る<後編>
理想のスイングと現実策
黒宮幹仁コーチがパリでの戦いを見て「珍しく、結果にこだわった打ち方とかもしていたんです。『スイングが悪いから結果が悪い』じゃなく、『スイングが悪くても成績を出さなきゃいけない』っていうことに特化した4日間ですよね」と話していた。常に理想のスイングを追い求めてきた松山にとって、葛藤はなかったのか。 「結果を出しに行くのは当然。“普通に”オリンピックでメダルを獲りたいっていう思いがあった」とした上で続ける。「練習していること、自分がやりたいことをほったらかしにして、自分が出せるものを出していく。取り組んでいることを一回無視するっていうことなんで、あんまりやりたくはないですよね」
先に見据える到達点を意識した積み重ねより、リスクを減らして目の前の4日間のスコアに結びつけることを優先するスタイル。キャリアを通じて高い壁を打ち破ることを目指す松山にとっては、必ずしも歓迎すべきものではないかもしれない。それをメダル獲得にしっかりつなげたからこそ、今後の糧にもなる。 「それは結果ありきなんで。結果が出れば、そこから得るものもたくさんありますし。自分の引き出しというか、レパートリーの中に増えることにもなる。今やっていることに対して、反対の動きとかも入ってくるかもしれないからやりたくないというだけで、それがうまく作用して、とんでもなく良い方向に行くこともある。それは(長い目で見ないと)分からないですけど、でも(今回に関しては)良い方向には向かったんじゃないかな、と」
ロスで金「目指したい」
7人のプレーオフでメダルを逃した東京、価値ある銅メダルをつかんだパリを経て、2028年ロサンゼルス五輪へ。舞台はことし2月の「ジェネシス招待」でカップを掲げたリビエラCCだ。 「ロスは知り合いが多いですし、そこで戦っている姿を見せたいっていうのがある。もちろん金を目指したいと思っていますけど、4年後なのでどうなっているか分からない。とりあえず、4年後に選ばれる選手でありたい。この4年間でどれだけ勝てるかだと思っています」