衝撃の12球デビュー!ロッテ佐々木朗希の何がどう凄かったのか?
現役時代に阪神、ダイエー(現ソフトバンク)、ヤクルトでエース、ストッパーとして活躍した評論家の池田親興氏は、フォームの変化と、あえて80%ほどに力を制御していた部分に注目した。 「去年も彼の投球を映像で見たが、テイクバックでの腕の使い方が大きく変わっていた。これまでは腕を下げていたが、ヒジの位置を上げるようにしていた。体への負担と安定した制球力を求めての修正だろうか。加えて、この日の12球は、全力投球ではなかった。おそらく80%くらいの出力だったのではないか。マウンドの傾斜に合わせてステップした際に体の上下のバランスを崩さないための工夫だろう。投手にとって障害となる力みが消えていた。それでいて151キロのボールをコンスタントに投げるのだから、今後、マウンドでの感覚をつかみはじめて、力を入れ始めると、もっとボールは速くなる。その伸びしろにダルビッシュ級のポテンシャルの高さを感じざるを得なかった。ベールを脱いだとメディアは騒ぐがまだベールは脱いでいない」 佐々木も、試合後、池田氏の見立て通り、制球重視で全力投球はしていなかったことを明らかにしている。 池田氏は、阿部を詰まらせたボールとビシエドにファウルを打たせたボールに佐々木の凄さが見え隠れたしたと指摘する。 「キャッチャーの田村はすべてアウトコースに構えていた。阿部が詰まったのはいわゆる逆球。ツーシームのように少し動いたようにも見える。ビシエドのファウルもそうだが、打者はストレートを狙って、いずれも振り遅れた。理由は、佐々木の球持ちの長さにある。フォームが柔らかく、関節がしなやかにしなり、ステップ幅が大きいので打者により近いところでボールをリリースできている。打者からすれば、その分、差し込まれタイミングが遅れる。いわゆるストレートの質の素晴らしい投手。これが佐々木の特長だろう。スライダーは1球だけだったが、高速で、しかも曲がり幅も大きかった。変化球がキレるのも、しなやかさから来ている」 ルーキーイヤーの昨季は、沖縄キャンプから段階を踏み、フリー打撃登板、シート打撃登板、紅白戦登板と順調に来たが、まだ未完成の肉体に異変が起きて、対外試合登板という次の段階へは進めなかった。1年間、基礎体力作りに重点が置かれた。 池田氏は佐々木の今後をこう見ている。 「ランナーを置いたときのピッチングやクイックができるかどうか、他の変化球を含めた制球力の精度などクリアすべき課題は多い。まだ19歳。体は出来上がっていないし、次に30球、その次に50球と徐々に球数が増えてきたときの体のリカバリーも気になる点。無理はさせず丁寧に見守るべき投手だろう。それらを順調にこなしていけば、当然、1軍に出てくる。勝てますよ。ただローテーに組み込むというより休ませながら先発で使うのがベストだろう」 ロッテの首脳陣は、登板後の回復に異常が見られなければ、オープン戦でもう1試合登板させる方針だという。