株式市場における構図が「崩壊」した…! 「衆院選」「総裁選」後のなんとも不思議な「日本株」の動き
石破総理の誕生によって、これからの日本経済がどうなるのか。期待の声がある一方で、不安材料も浮き彫りになってきています。不安定になっているのは政局だけではなく株式市場も同じのよう。衆議院選挙での自民党の大敗、そして石破総理の誕生という流れが日本経済や株式市場にどのような影響を与えていくのか。経済や株式市場のプロであるなかのアセットマネジメント(https://nakano-am.co.jp/)代表の中野晴啓さんに話をうかがっていきます。(2024年11月7日取材) 【マンガ】iPhoneが発表された日にアップル株を「100万円」買っていたら
総裁選や衆議院選での株価の動きをどう見る?
インタビュアー川崎さちえ(以下、川崎):総裁選や衆議院選挙があり、慌ただしい9月、10月だったと思います。その間、株式市場も大きく反応する場面もありましたが、中野さんはどうお考えですか? なかのアセットマネジメント代表 中野晴啓さん(以下、中野さん):2024年9月27日に自民党の総裁選が行われました。結果、石破さん(現在の石破総理)が総裁に選ばれたわけですが、その後の日経平均株価は下落をしています。10月27日に高市早苗さんが総裁に選ばれるのではないかという期待で日経平均株価が上昇した反動もあったのでしょう。ただ、その後は徐々に株価を戻して4万円をこえる場面もありました。 そして10月27日の衆議院選挙です。この選挙で自民党が大敗した直後は日経平均株価は上昇していますが、その後は下がりました。そしてあまりパッとしない値動きを続けています。でも私が注目をしているのは、この間円安がかなり進んだことです。 通常、円安になると輸出関連株が買われて株高になります。総裁選からずっと円安が続いていたのですが、株価はそれに反応しませんでした。これが何を意味するのかというと、株式市場におけるこれまでの構図が崩れてしまったということです。
ロジカルに動かない株式市場
川崎:なぜ構図が崩れたと思いますか? 中野さん:石破総理が総裁選前まで言っていたことと、総裁選の後で言い出したことが全く違ってしまったからでしょうね。やろうとしていた増税や金融所得課税強化の話も見えなくなってしまいました。総裁選前の約束は一体何だったのだろう。そういう空気がマーケットに流れてしまったんです。なんだか信用ができないぞという雰囲気になって、株価もジワリと下がる場面が多くなったのだと思います。この時点で政治の不安定感はありましたが、衆議院選挙で自民党が大敗したことが、政治の不安定さを浮き彫りにしました。 ただ、衆議院選挙の後は株価は上がりました。本来なら政治が不安定になるのだから株が売られてもおかしくはないので、私自身不思議だなと感じました。株式市場では悪材料が出尽くしたということのようですが、これも株式市場ならではの独特の理由です。実際何が出尽くしたのかはわかりませんが、ひとまず衆議院選挙の結果が出た、そして予想通り自民党が大敗をしたということでマーケットがプラスに反応したわけです。自己実現的に楽観反応しただけで、短期的な相場の思惑買いは長くは続かないでしょう。 川崎:ロジカルなことではないということですか? 中野さん:そうですね。何かしらのロジックがあってその上で成り立ったものではなく、市場のムードに流されてしまったという印象です。言い方を変えれば、自民党が大敗すれば政局が不安定になるけれど、それはもともとわかっていたこと。その通りになったから、逆に好材料になってしまったという感じでしょうか。本来は理論的な根拠があって株価が動きますが、株価の短期的な動きは、所詮その程度の薄っぺらい思惑で動くのです。 川崎:このような株式市場の不安定さは、まだまだ続くと考えますか? 中野さん:今(2024年11月7日現在)は政権がどうなっていくのか、はっきりしないことが多い状況だと私は感じています。石破総理が、これまで言っていた政策をどれだけ実行する意思があるのか、それがはっきりと見えてこないと不安定さが出てしまい、マーケットも大きな値動きをすることもあるでしょうね。