【40代、50代・薬と上手に付き合う方法⑤】その薬は本当に必要? 効く風邪薬は存在しない!?
熱が出たからとすぐに解熱剤を飲み、医師から処方された薬は自分で調べることなく飲んではいないだろうか? その薬は本当に必要? 自分できちんと納得してから飲む習慣をつけたいもの。そんな薬と賢く付き合う方法を、薬剤師の鈴木素邦(そほう)さんに伺った。
風邪をひいたらまずは自己免疫力で治す!
風邪をひいたら、少しでも早く治そうと、風邪薬をドラッグストアに買いに行ったり、医療機関を受診する人も多いはず。実は「風邪を治す風邪薬はない」と、鈴木さん。それはどういうことなのだろうか? 「風邪の原因の80~90%はウイルス感染によります。そのウイルスの種類は200種類以上あります。しかもその年や季節によって、ウイルスは変異するので、それに対応する薬を開発するのはほぼ不可能なのです。 薬を開発するには、そのウイルスの種類や性質を見極めなければなりません。それには膨大な時間がかかるのです。その間に変異してしまうので、開発が追いつかないわけです。 新型コロナウイルスのパンデミックでも、すぐに効果的な新薬はできませんでした。ですから、医療機関に行っても、風邪を根本から治すような特効薬はもらえません」(鈴木さん) ドラッグストアにも風邪薬として売っているが…。 「風邪の症状、例えば、くしゃみや咳、発熱を止める薬はあります。ただし、症状を抑えるだけです。 ウイルスが体内に侵入すると、口や鼻、喉内壁の粘液がその異物をキャッチして、体外に排出しようとします。それが鼻水であり、くしゃみです。それでもウイルスが増殖すると、免疫力が働いてそれを撃退するために、炎症を起こして喉が腫れたり、咳や熱が出たりします。 つまり、風邪の諸症状は、外から侵入して増殖するウイルスを撃退するための、体の反応なのです。 ですから、風邪の場合はおとなしく寝ていれば、免疫力が働いてウイルスを減らし、2~3日程度で熱は下がって回復するのが一般的です。むしろ、すぐに咳止め薬や解熱剤を服用してしまうと、せっかくの自己免疫力が発揮されないので回復が遅くなることがあります。 最も効率よく治すには、3日程度はおとなしく寝ていて自分の免疫力に頑張ってもらい、3日たっても症状がよくならない場合は、風邪ではないかもしれないので医療機関を受診します。 とはいえ、咳止め薬や解熱剤で症状を抑えたからといって、治らないわけではないので、3日も咳や熱を我慢するのはつらいという場合は服薬するといいでしょう。臨機応変に対応してください。 ほかに、鼻水などの症状がなく、咳だけが出る、熱だけが上がるといった場合も、重篤な病気の可能性があります。その場合は早めに医療機関を受診してください」