『虎に翼』原爆裁判の重み、寅子モデルの三淵嘉子さんやよねさんが教えてくれたこと
ドラマが終わっても持ち続ける「心によねさん!」
「普段、ドラマどころかテレビもほとんど観ない私が『虎に翼』にエンパワーメントされれました!」と連絡をくれ、『「虎に翼」に心動かされる理由』という前後編の記事を寄稿してくれたSRHRアクティビストで#なんでないのプロジェクト代表の福田和子さん。 【福田和子さんが選ぶ、忘れられない、印象的だった場面】 1) 寅子と航一の「笹竹」での結婚式、夫婦別姓判決文読み上げ(第21週) 私たちが一日も早く聞きたい判決、望む未来がここにある! この場面、泣きました。 「同じ姓を名乗るかそれぞれの姓を名乗るかは、申立人の夫婦間で自由に決定するべきである」「それは憲法により保障された権利のはずである」 いつか本当に、いや、一刻も早く! 上記のような言葉を以って、選択的夫婦別姓の実現を祝い、うれし涙を流せますように。 2) 父親を殺害した斧ヶ岳美位子の尊属殺弁護。父親に長年暴力や性虐待を受け、妊娠出産を余儀なくされていた女性の殺人を寅子の友人のよねが担当。「自己又は配偶者の直系尊属を殺害した者は死刑又は無期懲役に処する」という刑法によねは屈せず立ち向かっていく(第23週~最終週) 「クソだ!」 社会の不条理に対して、よねさんが法廷でそう言い放ってくれた時、どれほど救われ、心が軽くなったか。 「無力な憲法を、無力な司法を、無力なこの社会を、嘆かざるを得ない!」 そう思わされる現実はいまも続いています。しかし、それを跳ね返せることもあるんだと、大きな希望でした。朝ドラのチカラ、すべてのひとに是非みてほしい回でした。 3) 横浜家庭裁判所の所長となった寅子。お祝いに同級生が「笹竹」に集まり、その場には偶然、裁判官を勇退した桂場もいた。桂場が寅子が歩んできた道のりに対して、「地獄に喜ぶ物好きはほんのわずかだ」と言うと、よねは「いや、ほんのわずかだろうが、たしかにここにいる」と静かに、しかし力強く言う(最終回) 「ほんのわずかだろうが、たしかにここにいる」 このセリフがよねさんの声で脳内再生されるだけで泣きます。 先人たちのおかげで、いまがある。感謝と心強さでいっぱいになる。まだまだ“伸びしろ”だらけの世の中。私も絶対、消されないぞ、ここにいて、心がどんなに血を流しても、現在、そして未来のために、その列に続きたい。 最後の最後に寅子が桂場に言った「はて、いつだって私のような女はごまんといますよ。ただそれを時代が許さず特別にしただけです」を心に刻みたい。私たちは、ひとりじゃない。ありがとう、虎に翼! 【福田和子さんが感じた『虎に翼』の魅力】 私も尊厳を持って、胸を張って生きていいんだ。『虎に翼』は終始そう思わせてくれたドラマでした。 カフェーの女給さん、橋の下で生きる女性、専業主婦、性的マイノリティ、民族的マイノリティ、性暴力被害者、フェミニスト、「浮浪児」とされた子どもたち……。これまで透明化されたり、差別されたり、物語の中では蔑みや同情の視線で消費されたりすることの多かったあらゆる人たちが、個々、人として尊厳をもって可視化され、「すべて国民は法の下に平等」であることを、ドラマ全体が体現してくれていたように思います。 私自身、とても救われ、励まされました。そしてこのようなドラマがNHKの連続テレビ小説で放送されたことに本当に大きな意味があると思います。 「上げた声は消えない」 ドラマは終わっても、私たちの心に根付いた「はて?」のチカラと“心のよねさん”、不滅です! 本当にありがとうございました! 第3編では、勇三さんとの別れや花江ちゃんの涙、梅子さんの助言など、まだまだ語り尽くせない『虎に翼』名場面をお伝えする。
FRaU編集部