「ほんだし(R)」誕生55周年、関西では「小袋タイプ」がよく売れる!?ブランドロゴの“かつおの向き”に隠された秘密とは?
寒い日が続くなか、味噌汁や鍋料理などの味付けに「ほんだし」を重宝する人は多いかもしれない。ほかにも、炒め物や煮物といった幅広い料理に活用できる万能調味料として、今や私たちの食卓に欠かせない存在と言える「ほんだし」。 【画像】発売当時の「ほんだし」。ブランドロゴであるかつおの向きが現在とは逆になっているが、その理由とは... 2025年には誕生55周年を迎える「ほんだし」だが、実はブランドロゴであるかつおの向きに込められた想いがあったり、地域によって売れ筋が違ったりするのはご存知だろうか。 そこで今回は、「ほんだし」の誕生秘話や地域別の売り上げなどについて、味の素株式会社 コンシューマーフーズ事業部の三科光彦さんに話を聞いた。 ■1970年誕生の「ほんだし」ブランドロゴに隠された秘密 1970年代前半の日本は高度経済成長期、人々の生活は豊かさを増していた。そんななか食事は洋風化やインスタント化が進み、日本の食卓に根付いていた味噌汁もかつお節を削る手間から、当時の生活スタイルに合わなくなりつつあった。 「こうした時代のなか、弊社は『豊かな食生活』の実現を目指し、新たな調味料の開発に着手しました。そして1970年、本物のかつお節から作られた『ほんだし』が誕生したのです。これ以降、『家庭でも簡単に本格的な和食料理が楽しめるようになった』と声をいただくようになりました」 発売以来、「ほんだし」は人々の生活の変化に合わせて進化を続けてきた。1990年代の健康志向の高まりを受け、健康志向のレシピを開発し、2007年には、それまで2種類だったかつお節から、「香り・コク・味わい」に優れた3種のかつお節を使用した新生「ほんだし」として生まれ変わった。 しかし、2000年を超えたころから中食(※惣菜や弁当などを買って食べること)やさまざまな調味料の発売など食生活の多様化に伴い、「ほんだし」の使用機会がてい減し始めた…。 「2007年のリニューアルを機にブランドパッケージを一新するなかで、ロゴマークのかつおの向きを左から右へと変更しました。かつおの向きを変えたことには諸説ありますが、リニューアルしたことをわかりやすくお伝えしたかったことに加え、生活者の皆さまの食生活に一層貢献したいといった想いや、その先に『ほんだし』も右肩上がりに伸長してほしいという願いが込められているそうです」 ■関西だけで売り上げ約5割?「ほんだし」小袋品種が人気のワケ 「ほんだし」は、現在約30種類もの商品が展開されており、料理や好みに合わせてフレーバーを選ぶことができるが、実は地域によって売れ筋に違いがあるそうだ。 「どの地域でも人気なのは定番の『ほんだし』かつお品種ですが、関西地方では『ほんだし』かつお品種のなかでも小袋品種が人気で、そのシェアは約5割を占めています。これについては、小分けタイプのだしが使用されてきた歴史と関係しているそうです。また、大阪では親しみを込めて『アメちゃん』を配る習慣があるように、回覧板に『ほんだし』小袋品種を添えた方もいらっしゃったという話を聞いたことがあります」 関西地方、特に大阪においては「ほんだし」小袋品種と並び、「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」が人気だが、これについては江戸時代からの歴史的な背景が影響しているようだ。 「大阪は江戸時代から『天下の台所』として知られ、全国各地の食材が集まる商業の中心地でした。この時期、北海道からの昆布が『昆布ロード』と呼ばれる航路を通じて大阪に運ばれ、昆布をもとにしただし文化が発展しました。また、和歌山や静岡で獲れたかつおも京都や大阪へ運ばれたため、関西地方では今でもかつおと昆布のあわせだしが好まれているそうです」 ほかにも「ほんだし いりこだし」は、煮干しだしを好む中国・四国地方で高い支持を得ており、同地方における「ほんだし いりこだし」シリーズの売り上げは全体の4割を超える。「スーパーの和風だしカテゴリー棚をみても地域によって違いがあるので、お住まい以外の地域に足を運ばれた際は、ぜひお店の品ぞろえを楽しんでみてください」と三科さん。 ■2025年で誕生55周年!若年層からの人気も急上昇中 そして2025年、「ほんだし」は誕生55周年を迎える。前述のとおり、一時は使用機会がてい減していた。しかし「ほんだし」が、手作業で丁寧に作られたかつお節からできていることが認知されるようになってきたことや、料理系インフルエンサーとコラボして多彩なレシピを発信していることもあって、2023年9月以降の売り上げは回復傾向にあるそうだ。 「料理研究家のリュウジさんを始め、多くの料理系インフルエンサーの方々とコラボさせていただき、動画を通じて『ほんだし』の新しい使い方を発信しています。また、2023年から始動したアンバサダープログラム『あじふれんず』においても、多くのインフルエンサーの皆さまと連携してレシピを発信しています」 こうした活動も相まって、若年層を中心に「ほんだし」を使用する人が増加しており、一部の生活者からは「味噌汁以外にも使えるなんて知らなかった」「水で溶かなくても、かけたりあえたりしても使えるんですね」といった声も。また、SNS上でもユーザーが考案したアレンジレシピが日々投稿されており、三科さんは「SNSからレシピのヒントをいただくこともありますよ」と語る。 「『ほんだし』という商品について、生活者の皆さまにお伝えしきれていない魅力がまだまだあると感じております。そのため最近のCMでは、本物のかつお節の風味を活かした調味料であることを訴求しています。また単なるだし汁としてではなく、たとえば『ほんだし いりこだし』にオリーブオイルを加えるだけで、風味豊かな『アンチョビソース』が簡単に作れるなど、アレンジすることで洋食にも活用できるのです。今後も、香りや風味、うま味を通じて、和風メニューのおいしさを最大限に引き出すようなレシピを提案していきたいですね」 半世紀以上にわたり、日本の食卓に欠かせない存在となった「ほんだし」。これを機会に定番の味噌汁や吸い物はもちろん、自分だけのオリジナルレシピにチャレンジしてみては? 取材・文=西脇章太(にげば企画)