巨人・鈴木尚広氏が語る日本S5つの勝敗ポイント「静の広島と動のソフトB」
広島はソフトB強肩の甲斐を相手に機動力を生かせるか?
鈴木氏は巨人時代の2012年に日本シリーズで日ハムを4勝2敗で撃破して日本一になった。 「シーズンでは、ほとんど出ていなかったボウカーが打った記憶がある。左対左なのにボウカーが抜擢されて日ハムのエースだった吉川投手を攻略した。シリーズを制するチームからは、そういう選手が必ず出てくる。誰にも、いわゆるシリーズ男になるチャンスがある」 一塁でスタメン抜擢されたボウカーは2本塁打7打点と暴れて、優秀選手賞に選ばれている(MVPは内海哲也)。 広島にあってソフトバンクにないものに機動力がある。95盗塁はリーグトップ。トップバッターの田中広輔は32盗塁をマークしている。機動力についてのスペシャリストの鈴木氏も広島の“足”に注目している。そこが3つ目のポイント。 「機動力という面では広島だが、ソフトバンクには、盗塁阻止率の高い甲斐選手がいる。これは機動力を封じる抑止力になる。もちろん、投手のクイックとの兼ね合いがあるが、僕が走者でも甲斐選手が捕手なら躊躇する。それでも広島は、シーズン同様にチャレンジしていくのか。試してみなければわからないが、果敢に走れば面白い。ミランダ、バンデンハークの先発候補の2人はクイックが不得意なので、甲斐選手がいかに強肩といえども、ここにはチャンスがある。盗塁は、成功と失敗が紙一重のものだが、緒方監督がどう動くか、選手がどう動くか、リスクを取るか、チャレンジを取るか。ここも勝敗を分ける見所のひとつになる」 ソフトバンクの甲斐拓也の盗塁阻止率.447は両リーグトップ。“甲斐キャノン”と呼ばれる強肩と広島の機動力との戦いも勝敗の行方を占う大事なポイントになる。 「短期決戦は、静より動。いくら主力打者でも、打てないなら、さっと代える。エースでも調子が悪ければ、すぐに代える勇気が必要で、143試合のペナントレースの戦い方とはまったく違う。そういう指針をチームとして徹底すべきだ。先手先手を打つベンチワークが勝敗を分ける。『いつかやってくれるだろう』と考えている間にシリーズは終わってしまう。我慢の野球よりも、スパン、スパンと、切り替える野球が主導権を握ることになる」 鈴木氏が語るポイントの4つ目はベンチワークだ。 「そういう野球をやると、ベンチ全員が『自分にもチャンスがある』と考え、モチベーションがあがる。『自分の仕事だけをしていればいい』という考え方では短期決戦は戦えない。その短期決戦の定義に照らし合わせると、動の野球をCSで見せたのはソフトバンクの方だった。しかも、巨人を3タテにしたことで日程が1週間空いてしまった広島に対して、ソフトバンクは、2位から勝ち上がってきた勢いがあり、なにより試合勘が継続している」 静より動。これら4つのポイントを考慮した鈴木氏のシリーズ予想は「4勝2敗でソフトバンク」となっている。