体験が多いほうが子どもの「学力」や「自己肯定感」は上がる? 学力調査に詳しい専門家に聞く“研究結果”とは
たくさん体験をしている子は「体験の幅が広い」ので、自分の体験をもとにした意見や推論を言いやすく、さまざまな視点からアプローチしようとするので、学習意欲も高くなりやすいといえます。結果として学力が高まることにもつながるでしょう。 この二つのグラフから、自然の中で遊んだり学んだりする体験やお手伝いには、自分が疑問に思ったことやできないことを「自分なりに工夫して解決しよう」という要素がたくさんあると推察できますね。 ■体験と学力との関係は ――ほかにも身につく力はありますか? 同機構の別の調査では、体験を多く行っている子どもほど、人に対する思いやりや協調性、さらには積極性や自己肯定感が高い傾向があることもわかっています。 体験の多い子は成功体験だけでなく、失敗体験も多いもの。失敗したり、やる気をなくしたりといった経験がある子は、他人がそのような状況になったときのつらい気持ちに共感できたり、応援しようとする気持ちを持ちやすいということです。失敗や困った経験を乗り越えて「がんばろう」と気持ちを切り替えられることにもつながるのではないでしょうか。 ――体験が多い子のほうが学力も高い傾向があるのでしょうか? 国立青少年教育振興機構の調査では体験の多い子は、勉強に対する自信も大きいという結果も出ています。「勉強が得意なほうだ」と思うということは学力に対する自信を持っているので、ある程度の学力も伴っていると考えられます 。文部科学省の調査では、自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがある子どもほど、理科の学力が高いという傾向が見られました。 裏を返せば、机に向かって勉強すること「だけ」が学力や自信につながるわけではないともいえます。自然体験から学ぶのは知識だけでなく、失敗したときや困ったときに原因を考えたり、工夫して解決したり、乗り越えようとする力です。これらの力は、学業の達成だけでなく人間的に成長していく礎にもなります。