6歳で「小学校に行かない」と決めて何が起きたか 校長と教委がやって来て…両親の反応は
まさかの学籍消滅で「存在しない子」に
「小学校には行かない」と家族で決めたのは良かったのですが、そう小学校に返事をすると、すぐに教育委員会の担当者と小学校の校長先生が揃ってわが家に飛んで来ました。 2000年代の始め頃(現在もかもしれませんが)、「入学もせず1日も通わない」という子どもやそれを容認する家庭は、かなりレアケースだったのかもしれません。教育委員会の方や校長先生としても、驚いたのも無理はありません。 両親が学校側と話し合いをしている間、私は別の部屋で遊んでいたことを覚えています。学校側は、「拓海君を小学校に通わせるように」と、なんとか両親を説得しようとしたのでしょう。 でも、今度は両親が首を縦に振りません。「本人が“行かない”と言っているので」。先ほども書きましたが、父も母も教育の専門家でもなんでもありません。何か確固たる信念や、確信があったわけではなかったと思います。それでも自分の子どもの言葉や感覚を信じてくれたのです。
教科書ももらえない
話し合いはずっと平行線でした。「行かない」というわが家の方針に、学校側も納得できなかったのでしょう。とうとう、学校側が“キレて”しまいました。「それでは、1年間、本当に通わなかったら小学校から拓海君の“籍”を抜くことになりますが、それでもいいんですね?」。そう言って、教育委員会の担当者と校長先生は帰っていったそうです。 彼らが言う“籍”とは、「学籍」のこと。学籍は、その学校や教育施設の児童、生徒であることを示すものです。子どもひとりひとりに小学校から大学、大学院まで教育施設ではかならず与えられるものです。そしてその記録は法令に基づいて“指導要録”という記録簿によって、必ず管理されることになっています。つまりとても大事なもので、本来は「籍を消す」ということはあり得ない事態です。 実際、法令に触れる可能性があることだそうですが、それでも消し去ってしまうというのですから、学校側としては、本当に受け入れ難いことだったのだと思います。結果、私は本当にどこの学校にも籍がない児童、学校教育においては“存在しない子ども”になってしまいました。「そんなこと、平成の時代に起こるの?」と思う方もいるかもしれませんが、本当に起きたのです。 記録上、そして事実上、私は小学校に入学も卒業もしていません。こうした表現が正しいのかはわかりませんが、一般的にイメージする不登校の子どもの場合、学校には通わなかったとしてもクラス分けされて、「1年3組です」といったお知らせが学校から来ます。全教科分の教科書や副教材も一式貰えます。 でも私はそもそも籍がないので、それもありません。私個人としては自分で「行かない」と決めていたので、気にもなりませんでしたが、この“無学籍”問題は、後々面倒なことになってしまいます。