これはもう無理かも…石破政権を退陣に追い込む「政治とカネ」の新たな問題とは?
習氏としては、新年の演説で「減速する経済は努力により克服できる」と訴えたり、台湾統一について「誰も大きな流れを妨げることはできない」などと力説したりするだけでは足りず、アメリカでトランプ政権が発足する1月20日よりも前に、日本との関係改善を目に見える形で進め、アメリカとの貿易戦争に備える必要があったのだ。 そこにうまく乗せられたのが石破首相ではなかったか、と筆者は見ている。自民党総裁選挙で争った高市早苗前経済安保相らと比べれば、けっして「反中」ではない石破首相にとって、安倍元首相とトランプ氏、岸田前首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のように、習氏と関係強化を図ることは、政権延命にプラスになる。 その石破首相は、12月25日、岩屋毅外相を中国に派遣し、中国人向けビザの発給要件を大幅に緩和することや富裕層向けに10年有効ビザの新設を約束した。さらに、12月28日、TBS系列の報道番組では、習氏との首脳会談を重ねる姿勢を強調してみせた。 これらの対中方針は、日本の国益につながることではある。しかし、中国は沖縄県尖閣諸島周辺で依然として領海侵入を繰り返している国だ。反スパイ法などを設け、日本人をはじめ他国の国民の身柄を平然と拘束する国家だ。中国が差し伸べる甘い誘いに容易に乗ることは断じて許されないと思うのである。 ● どうせ「退陣」が避けられないのなら 石破首相には大胆さを求めたい 言うまでもなく、今年は韓国で政権が交代する。アメリカでも、トランプ氏が第47代大統領として復権を果たし、国際社会がトランプ氏の言動に振り回される年になる。 加えて言えば、2025年という年は、4月に大阪・関西万博が開幕し、ある程度、内需拡大が見込まれる半面、GDPの規模で、昨年のドイツに続き、インドにも抜かれて、世界第5位までランクダウンする年にもなる。 つまり、2025年という年は、日本にとって、激変する国際社会の中でどう振る舞うか、その立ち位置を決める年であると同時に、「けっして豊かとは言えない国」に成り下がった現状を直視しながら、再び豊かな国になるために動き出さなければならない重要な年ということになる。 それだけに、石破首相には踏ん張ってもらわなければならない。この先、石破首相が大連立しようが「衆参同日選挙」に打って出ようが別に構わないのだが、何をやっても、つねに「退陣」のリスクをはらみ、「政治とカネ」などで信頼を失う危険性も伴う。 であるなら、悔いのないよう内政と外交で大胆に「政策通」らしさを発揮して、日本を前に進めてほしい…そう思うのである。 (政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)
清水克彦