「原爆が落とされ戦争が終わった…そう思わないとしょうがない」被爆者・深堀繁美さん死去 93歳
2020年の長崎平和祈念式典で被爆者代表「平和への誓い」をつとめた深堀繁美さんが亡くなりました。93歳でした。 【画像】ローマ教皇フランシスコに爆心地で花輪を手渡す深堀繁美さん、この日は雨が降り続いた ■14歳で被爆、きょうだい4人を失った カトリック信者だった深堀繁美さん。神父になるため神学校で生活していた14歳の時、動員先だった飽の浦町の三菱長崎造船所(爆心地からおよそ3.4キロ)で被爆しました。 自宅は爆心直下の浦上地区にあり、静子さん、君子さん、光明さん、昭子さんの姉2人と妹、弟が爆死しました。被爆翌日、自宅を目指した時のこと、きょうだいを亡くした思いを深堀さんは次のように話していました。 深堀繁美さん: 「岩川町…ここを通って自宅に向かいました。『下の川』には人間があふれていた。みんな水を飲みに来ている、やけどしているから。生きている人は足音が聞こえたら『みず!みず!』と言うんです。でもやる水もないし…見えないんです、黒焦げになった人間の山だから」 「家は爆弾が落とされても教会がかばってくれるから大丈夫と思ってた。あんな大きい建物は普通の爆弾では壊れないと思っていたから…。でも下の川の所から教会のドームがないのを見て家もダメと思った…」 「きょうだいもやられてしまって腹が立ちますよ。でもそれで戦争が終わったんだから…。そういう風にとらないとしょうがない。寂しいよね…悲しいよね…でもそれによって今平和になったんだから…」 浦上地区では1万2千人の信徒のうち、およそ8千500人が爆死したとされています。 ■教皇との出会い「平和のバトン」 浦上教会の役員をつとめていた深堀さんは教会を訪れた修学旅行生らに被爆体験を伝える活動を続け、2019年には爆心地を訪れたローマ教皇フランシスコに花輪を手渡し、共に核兵器廃絶と世界の平和が実現するよう祈りました。 2020年8月9日に執り行われた平和祈念式典では被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げ、教皇の言葉も引用し平和のバトンをつないでいって欲しいと訴えました。
2020年「平和への誓い」深堀繁美さん: 「『平和な世界を実現するには、すべての人の参加が必要』との教皇の呼びかけに呼応し、一人でも多くの皆さんがつながってくれることを願ってやみません。特に若い人たちはこの平和のバトンをしっかりと受け取り、走り続けて頂くことをお願いしたいと思います」 家族によりますと、深堀さんは3日老衰のため長崎市内の病院で静かに息を引き取ったということです。93歳でした。 通夜は5日午後6時から、告別式は6日午後0時半からカトリック浦上教会で執り行われます。
長崎放送