泣き叫ぶ80代の母を老人ホームにひとり残し…「いいえ、心からホッとしました」。50代女性を追い込んだ〈介護の限界〉と〈家族の無理解〉
「介護への理解」は、介護者だけでなく…
日本は驚異的な速度で高齢化が進んでいる。2023年には高齢化率29.1%となったが、今後もさらに、2040年には35%、2055年には38%に至るとの推計もある。 高齢化の進展に伴い、山田さんの母親のように、認知症になる患者も増加している。『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』による推計では、65歳以上の認知症患者数は、各年齢の認知症有病率が一定の場合、2025年には約675万人、有病率18.5%と、高齢者5.4人に1人ほどが認知症になると予測されている。 そこで問題になるのが「介護」だが、厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、介護が必要となった主な原因の最多は「認知症」で16.6%、次に「脳血管疾患(脳卒中)」で16.1%、以降、「骨折・転倒」13.9%、「高齢による衰弱」13.2%、「関節疾患」10.2%と続く。 在宅で介護をする場合、介護者として最多となるのは「配偶者」であり(全体の22.9%)、以降、「同居する子」(16.2%)、「事業者」(15.7%)と続く。また、「女性」が68.9%と圧倒的に多く、同居する主な介護者の年齢をみると、最多は「60代」(29.1%)、次いで「70代」(28.5%)、「80代以上」(18.4%)、「50代」(17.2%)となっている。 認知症患者の介護は家族でも大変だといわれる。ときには徘徊や暴力なども見られ、介護者も疲弊する。かといって体力が衰えると、食事をはじめ、風呂やトイレといった日常のすべてにサポートが必要だ。いずれにしろ体力を消耗することになる。 アクサ生命『介護に関する親と子の意識調査2019』によると、「もし子どもに介護施設での介護を提案されたら」との問いに対し、83.2%が「自宅や家族と離れるのは寂しい」としながらも、82.6%が「仕方がない」と回答している。 家族間の協力や理解が得られないと、介護者に余計なストレスがかかり、介護はさらに孤独で苛酷なものとなる。にほんはまさに「大介護時代」だ。いま介護にかかわっている人だけでなく、すべての人に「介護」というものへの理解が必要だといえる。 [参考資料] 厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』 LIFULL senior『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』 アクサ生命『介護に関する親と子の意識調査2019』
THE GOLD ONLINE編集部