吉田拓郎に“俺に歌わせろ”――泉谷しげるが「イメージの詩」をカバー 48年ぶりの古巣からリリースのワケ
なぜ「イメージの詩」なのか
今回のアルバムの現時点で決定している収録曲は、アルバムのために書き下ろした「怪物」と「たった一人の熱き思い」を含む全9曲だという。 「『怪物』は8分近くもあって俺にとっては大作だからな、聞き応えあると思う。それに今回はミュージック・ビデオっていうのも作る予定だしな、今まで以上に力が入っていることを見せたい」。 そして「フォーライフで出すんだったら」と、自らの作品ではないが、あえて収録曲に選んだのが、1970年に発売された吉田拓郎のデビュー曲「イメージの詩」だった。 ♪これこそはと 信じれるものが この世にあるだろうか 信じるものが あったとしても、信じないそぶり… 泉谷からの提言に、後藤社長も「自分も拓郎との出会いも『イメージの詩』だったから、今回のアルバムで収録したいと告げられた時は感慨深かった」と言う。 泉谷によると、 「もう30年ぐらい前になるんだけど、神戸で阪神淡路大震災のチャリティライブをスーパーバンドでやったことがあって(95年8月12日開催)。その時にハマショー(浜田省吾)が、この曲を歌ったんだけど、それが本当にカッコよかったんだよ。それ以来だな。『この曲を俺も歌いたい』って思っていて、ずっと、その機会を狙っていたんだ。それで今回、この曲を歌おうって思ったわけさ。拓郎に『俺にカバーさせろ』って言ったら、すぐにOKが出たけど、歌詞は“自分バージョン”で歌っているから、そこんところはヨロシク」。
拓郎は「いいやつ」
もっとも、泉谷自身にフォーライフを辞める時の拓郎に対する負い目があり、この選曲につながったのかもしれない。 「俺がフォーライフを辞めると言った時、もちろん話し合ったんだけど、その時に必死に止めたのが吉田拓郎だったからね。必死に止めてくれた。正直言って、こいつはいいやつだなと思ったよ。俺も……、もちろん気持ちの中では応えてあげたかったけどね。だけど社長になっちゃったら話が違っちゃうからな(吉田拓郎は77年に社長に就任した)。今、振り返ると、俺はおそらく怖かったのだと思う。やっぱり、自分の好きな人に失望していくのが嫌だったのだろうと思う」 と、今だから語れる心情も明かしていた。 渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ) 芸能ジャーナリスト デイリー新潮編集部
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