空飛ぶわんこから見る、犬とのつきあい方最前線
成長するペットトラベルサービス市場
アメリカの市場調査会社Global Market Insightsによると、ペットトラベルサービス市場規模は2023年は18億ドルで、2024年から2032年にかけて年平均成長率9.5%で成長し、2032年には41億ドルに達すると予想されている。 この予測を裏付けるように、アメリカの9,050万の世帯のうち78%が毎年ペットと一緒に旅行するという調査結果がある(アメリカペット用品協会調べ)。また、調査対象者の58%が友人や家族よりもペットとの旅行を好むと回答(Hilton global trends report調べ)。さらに、旅行者の半数以上がペット同伴を前提に旅行計画を立て(Harvest Hosts調べ)、宿泊施設の75%がペット同伴を認めるようになっている(American Kennel Club調べ)。ペットを置いて旅行するのは、子供を置いていくのと同じようにあり得ないと考えている人が増えているのだ。
パンデミックと犬
このような変化の背景には、大きく2つの要因があるのではないかと思う。 一つ目は、パンデミックの影響だ。Forbus Advisorによると、調査対象者の78%がパンデミック中にペットを迎え入れ、48%が家で過ごす時間が増えたことを飼う理由に挙げている。また、先述のアメリカペット用品協会によると、39%の飼い主が前年よりもペットに費やすお金が増えたと回答している。 一方で、パンデミックは負の影響も与えている。ロックダウン中は犬の需要が急増したが、パンデミック後は、生活の変化などから犬の遺棄も急増したのだ。英国王立動物虐待防止協会は、イギリスでの子犬の遺棄は2021年の411匹から2022年は711匹と73%も増加したと報告している。
罰から報酬へ
二つ目の要因は、犬に対する考え方の大きな変化だ。筆者もパンデミック中に保護犬を迎えた一人だが、以前飼っていた2頭の犬から得た知識がまったく通用しないことに驚かされた。 例えば、「犬は序列意識がある」は、「犬の社会構造はもっと柔軟で、序列よりも個々の関係性や状況によって行動を変える」に変わり、「飼い主は犬と明確な主従関係をつけること」は、「リーダーシップというより、協力や信頼に基づく関係が大切」という考え方になった。 しつけの面でも、罰を用いて支配する方法から、犬が自発的によい行動を行うように促す報酬ベースの手法が定着しつつある。現在、犬のトレーニングは報酬ベースと旧式が混在しており、筆者が受けたトレーニングコースは旧式のものだった。トレーナーがジャーク(素早くリードをひっぱり首に嫌悪刺激を与える)するたびに怯えて静かになる犬の姿は、今思い出しても胸が痛む。