アメリカ大統領選の結果に「中国の銀行」が大慌て…帰ってきたトランプが低迷中国に加える「トドメの一撃」
景気低迷は一段と深刻化
中国政府が需要の創出を重視する政策に方針を転換しないと、経済環境の厳しさは増すだろう。本来、スタートアップ企業の増加は、在来分野から先端分野への経営資源(ヒト、モノ、カネ)の再配分の促進に必要だ。 しかし、銀行の金融仲介機能の低下に加え、政府は富裕層に対する課税を強化している。共同富裕策も民間企業の創業経営者の成長志向を阻害し、起業件数は伸び悩む恐れがある。 現在、中国政府は海外企業に直接投資を増やすよう呼びかけているが、その効果は期待しづらい。最近、英医薬品大手アストラゼネカの中国法人トップが当局に拘束された。 中国事業の先行き懸念から同社の株価は下落した。幹部数名が保険金詐欺に関与した可能性があるとの報道もあったが、その理由ははっきりしていない。本件をきっかけに、海外企業は反スパイ法など中国の政策リスクの高さを再認識したといえる。 11月5日の米大統領選挙では、半導体、人工知能(AI)など先端分野を中心に対中締め付け策の徹底を重視するトランプ氏が勝利した。
トランプ政権発足後は…
来年1月20日のトランプ政権発足後、米国政府がファーウェイや半導体受託製造企業(ファウンドリー)大手のSMICのドル資金調達、日米欧の企業が製造する工作機械などの調達を全面的に禁止する可能性もある。 いずれも中国経済の成長を下押しする要因になるだろう。 銀行の収益性は、追加的に低下し成長分野への資金融通も停滞するだろう。融資先企業の業況悪化から貸倒引当金が増え、資金繰りに行き詰まる中小の銀行が増える恐れもある。それをきっかけに部分的に中国の金融システムの不安定性が高まることもあるかもしれない。 当面、中国の景気低迷の懸念はさらに上昇する可能性が高そうだ。 ―――― 【もっと読む】〈「中国の激安製品」お断りの国が続々と…切り札なき中国経済に聞こえ始めた「崩壊の足音」〉もあわせてお読みください。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)