待ったなしの少子化対策 「財源が」と言っている場合か 人とお金、社会を支えているのはどっち 田内学
将来の生活を考えるなら、万難を排して少子化対策に取り組んだほうがいい。 ところがである。少子化対策の話で、「財源が」と言い出す経済学者がいるのだ。僕はいくらでも国の借金を増やしていいと思っているわけではない。しかしながら、社会を支える人がいなければ、国は回らない。「将来、社会保障費が増えるから」と心配していても、医療従事者がいなければそのお金は使えないのだ。そして、人手不足が進めば、これまで国内で作っていた製品を海外に頼るようになり、円安も進んでいく。通貨インフレになって取り返しのつかないことになる。お金の流れを考えても、人手不足の問題は何よりも優先すべき経済政策だろう。 少子化対策ではなく高齢者が活躍しやすい社会を作ったほうがいいという声もある。お金を配ることが少子化対策に果たして効果があるのかという意見もある。しかしながら、有効かどうかを考える前に、財源を理由にして少子化対策の手段を限定化するのはいかがなものだろう。国債発行が嫌なら、他の財源を減らすことを考えたらいい。 本末転倒に思えてしかたない。人とお金とどちらが社会を支えているのかを考えてほしい。それとも、それは「経済学」の範囲の外側の話なのだろうか。 ※AERA 2024年12月16日号
田内学