待ったなしの少子化対策 「財源が」と言っている場合か 人とお金、社会を支えているのはどっち 田内学
物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年12月16日号より。 * * * お願いです。経済学者の先生、その口を閉じていただけませんか。 思わず心の声が出たのは、少子化対策の話。 先日、厚生労働省が発表した数字によると、今年上半期(1-6月期)の日本の出生数(外国人を除く)は約33万人だったそうだ。単純計算で1年間で66万人。例年、7、8月の出生数が多いことを考えても、70万人を割り込むのは確実だと言われている。 人口構成は、一番予測しやすい将来推計で、2017年の人口推計の出生率が“低”の予測でも、70万人を割り込むのは2031年と言われていた。ところが、それ以上の速度で少子化が進んでいる。 以前、ひろゆき氏(匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者)が子ども一人産んだら1千万円支払ったらいいという発言をして話題になった。「子育てにお金なんて」という上の世代の人もいると思うが、昔とは違って周りに頼ることができないから親の負担は増えている。近所の人にちょっと預けることもできない。保育園の利用が増えても、実際に、親(特に母親)が育児に使う時間は増えている。貨幣経済の発展(GDPの数字を増やすこと)ばかりを考えて、お金の介在しない支え合いが減ってしまった以上、お金という形で社会全体での支え合いを考える必要がある。 これまでのコラムでも書いたように、各地で人手不足が深刻になっていて、バスの便数を減らしたりせざるを得ないところも増えている。大阪の公営団地の建て替え計画では、更地にしたものの建設に着工できないそうだ。予算が無いのではない。人手不足で請け負う建設会社がいないのだ。 急速な少子化が今後進み、生産年齢人口の割合が減ると、こういった事態は各所で見えてくるだろう。働く人がいなければ社会は回らない。資本主義だろうと社会主義だろうと貨幣経済だろうと非貨幣経済だろうと、子どもでもわかる真実である。